「レールを外れても大丈夫。かえって見晴らしが良くなった」元女優の企画・編集者 山内 英恵さんインタビュー

「レールを外れてみたら、見晴らしが良くなった」異色の経歴を持つインハウスエディター山内 英恵さん

株式会社ファイネックス(FINEX)の事業企画部 事業企画グループで、コンテンツの企画からマーケティングまで、幅広く活躍されている山内 英恵(ヤマウチ ハナエ)さんは、元女優という異色の経歴の持ち主です。これまで、決して直線的とは言えない道筋をあゆんでこられた彼女に、経験のかけらをキャリアに活かす秘訣について伺いました。

プライベートなネットワークを仕事に反映させられるのが、いまの仕事の醍醐味

プライベートなネットワークを仕事に反映させられるのが、いまの仕事の醍醐味

――まずは現在されているお仕事についてお聞かせください。

弊社では、外国人の方々に向けたフリーペーパー『att.JAPAN』を季刊発行しています。いま所属している部署は「やるべきこと」が決まっていないんです。いわゆる“何でも屋”として営業を担当することもあれば、話題のグルメや外国人向けのコンテンツを企画したり、必要に応じて取材・記事の執筆までこなしたりと、幅広い業務をさせていただいています。

入社して初めて任された案件では、代理店にアートミュージアムをご紹介いただいて。打ち合わせを進めるなかで取材をさせていただくことになり、記事執筆、デザイン会社さんへの入稿まで、一連の作業を担当せていただきました。

――「ひとり編集部」といった印象ですね。

そうなりたくて、これからキャリアを積み重ねないといけないと思っているところです。これまで20年近く取り組んできた紙媒体としての「強み」は維持しながら、現在はそれと並行してSNSとWebでの「デジタルマーケティング」にも注力しています。

具体的には、これまで国内に限定して情報発信してきた企業や自治体から、海外に向けたFacebook運用のご依頼を受けることもあります。

――SNSやWeb配信では、どのようなことを心がけていますか?

SNSで情報を発信する際は、国内外にいる外国人とのプライベートなネットワークを積極的に活用するようにしています。

とくに友人らとのコミュニケーションは、海外の方々の興味を探り出しコンテンツ選びするのに役立ってますね。逆に言えば、プライベートなネットワークがあるからこそ、この仕事が楽しめているのかもしれません。

海外への関心と芸能活動。好奇心に任せて気の向くままに

海外への関心と芸能活動。好奇心に任せて気の向くままに

――海外の方と接点を持たれるようになった「きっかけ」はどのようなものでしたか?

大学時代にフェミニズムを専攻していたのですが、卒論のテーマで「黒人女性史」を取り上げたことがきっかけです。差別の歴史や女性の自立のあゆみについて知るうちに、海外に興味を持つようになりました。

それからは公益活動や、人道支援活動を行う青山学院のウェスレー財団のリーダーシップ研修にも参加。海外の方々と初めて密にコミュニケーションを交わしたのはその時でした。

昨年はインドネシアにアジアのおよそ10ヶ国から若い女性が集まり、セクシャルハラスメントや幼児結婚、HIVなどをテーマにディスカッションしたのですが、知的で情熱を持った女性がアジアにたくさんいることに強く感化されたのを覚えています。それからますます海外と関わる仕事がしたいと強く思うようになりました。

私には兄が二人いて、上の兄は仕事でアメリカに渡りアメリカ人と結婚し、下の兄もタイに転勤していました。海外に自然に関心が向いたのは、そんな家族の影響もあったと思いますね。

――幼い頃から海外に興味を持たれていたのでしょうか?

実は小学生の頃はお芝居に関心があって、ずっと宝塚音楽学校に入りたいと思っていました。ところが、実質的に受験できる4回のうちすべて落ちてしまって。挫折を経験し、芸能の道に進むのか、大学に進むのか、1年間くらいはほとんど誰にも会わずに引きこもるようにして悩んでいました。

結局、大学に進学することを決断しますが…。歌・踊りなど、受験で学んだことを「無駄にしたくない」という気持ちが強くて、芸能関連のお仕事も続けることに。インターネットテレビ局でニュース番組のキャスターを担当させていただいたり、舞台に立たせていただいたりと、貴重な体験をすることができました。

――学生時代、芸能活動と並行してどのようなアルバイトをされていましたか?

「喜怒哀楽を素直に表現できる子供の近くにいると、それが演技のヒントになる」とプロデューサーさんから助言されて、学童保育の指導員と家庭教師のアルバイトをしていました。いまの仕事を始める直前まで、6年間ほどしていたことになりますね。実際、子供たちからは多くのことを学ばせてもらいました。

カフェでもアルバイトをしましたが、そこで働いていたのは全員が20代の女性。同じ世代の方々と固まるのは得意ではなくて、こちらはあまり続きませんでした。

芸能活動を経験してわかったのは、「すべての人に好かれることはできない」ということ。芸能の世界では、自分では100点だと思っても「他人から見たら10点にも満たない」という場面がざらにあります。「みんなから100点をもらえないのなら、評価を気にしても仕方がない」と開き直れたのは、本当に大きな収穫でした。

いまの会社に入ったことで、パズルのピースがはまっていくのを実感

いまの会社に入ったことで、パズルのピースがはまっていくのを実感

――「他人の評価を気にしない」を実行するのは、そう簡単ではありませんよね。

芸能活動から転職・就職活動した経験が活きているのでしょうね。まったく未経験だった「インバウンドメディアの仕事」に気おくれすることなく挑戦できたのも、そのおかげです。「ある人から見たら不合格でも、別の人から見たら合格。もし落ちたとしても、それはその企業にとっていま必要ないというだけ」と思うことができました。

自分のスキルを活かせるかどうかについては、当然、不安が大きかったです。でも、これまでのさまざまな経験が一つに集約されてきているのを強く感じています。

――履歴書の上ではつながらないことが、うまく結びついたわけですね。

たまたま私が入社するタイミングで、いろんなことにチャレンジできる部署ができて、そこにたまたま私がやってきた。未経験の私が未熟ながらもなんとかこなしてこれたのは、アルバイトの経験が活きたのかもしれないし、ニュース番組のキャスターをしていたからかもしれません。

宝塚音楽学校を受験したことも、不慣れな仕事に取り組む上で「心の糧」になっていると感じています。気の向くまま、好奇心に任せてやってきたことが、いい具合に結びついてきているというか…。自分の積み重ねてきたものがいまの経験に不思議とつながって見えるんです(笑)。

レールから外れることを恐れて可能性を排除しなくていい

レールから外れることを恐れて可能性を排除しなくていい

――夢に向かって踏み出せない方にメッセージをいただけますか?

やりたいことがあるのは、とても素晴らしいことだと思います。多くの方がおっしゃっていることですが、自分の気持ちに素直になることが大切なのではないでしょうか。

最近は、女性が「キャリア」や「生き方」を選びやすい時代になりました。レールから外れることを恐れ、自分の可能性を排除してしまうのはとてももったいない。

いましかできないことに一生懸命打ち込んでいれば、たとえその時は実を結んだように見えなくても、人生のどこかのステージできっと活きてくるはずです。

――未来の好機に備えるために、心がけていることはありますか?

大学の先生がおっしゃっていた、「自分の物差しで人の幸せを測ってはけない」という言葉をいつもそばに置いています。「さまざまなバックグランドを持つ人と出会って学び続け、自分の物差しづくりをし続けてね」というメッセージがいまの私の指針です。

多くの方に会い、選り好みせず、いろいろな仕事に挑戦したいですね。そうすれば、どんなことも自然に受け入れ、手を伸ばすことができるのでは、と思っています。

(取材・文・撮影:鈴木 一禾)

プロフィール
山内 英恵(ヤマウチ ハナエ)
青山学院女子短期大学に在学中から、芸能活動を開始。NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」に出演するほか、AbemaTV「AbemaNews」チャンネルのキャスターとしても活躍。2018年に株式会社ファイネックスに入社し、現在は事業企画部 事業企画グループで、コンテンツ企画や取材、マーケティング業務などを担当。取材撮影協力:株式会社ファイネックス
http://www.finex.co.jp/
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