アーティスト・Gero/インタビュー 『歌い手になった今、あらためて無駄な経験なんて一つもないと思う』

Gero_1 動画投稿サイトから人気に火がつき、今年メジャーデビュー5年目となるGeroさん。上京時はバイトと両立しながら音楽活動をしていたお話や、曲作りの熱意、クリエーターの原点についてお伺いしました。8月にベスト盤をリリースし、現在は11月まで続く全国ツアー中! これから動画投稿してみたい人にも必見の裏話が満載です。

 

ライヴは感情を解放する場所。一緒に思いっきり楽しみましょう!

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——8月にベストアルバム『Gero The Best“Treasure”』をリリースして、現在はツアー中ですね。

今回のツアーは、“オリジナル曲”と “歌ってみた曲”を歌う日で、各場所2日間やっているんです。初めての挑戦だったので、最初は不安と期待があったんですけど手応えは感じています。

——作詞された新曲「だぁいじょぶだよ」もすごくパワーのある曲ですね。“大丈夫”という言葉は普段から大切にしているのでしょうか?

20代の頃、仕事や人間関係がうまくいかなくて悩んだ時期に円形脱毛症になったことがあるんですけど、実家に帰った時に、母に伝えたら「そんなんすぐ生えるから大丈夫」って言われて心が軽くなったんです。数年後に、母にその話をしたら、実はすごく心配だったけど「私が心配そうにしたら、あんたも不安になるやろうから」って言われて。僕はそれで救われたので、“大丈夫”って言葉の大切さは、ずっと自分の中にはありますね。この曲をライヴで演奏すると、いつも大合唱になるし、ステージからお客さんの笑顔を見られるのもすごく嬉しいんです。

どの曲も気持ちにグッと入ってきた時は、感情に任せて歌ったりしますし、ビブラートを入れたり、歌いあげたりライヴ用のアレンジはよくします。もともと歌は、手拍子から始まった文化だと思うので一緒に思いっきり楽しみましょう!
 

動画投稿サイトは“激アツな面白いおもちゃ”という感覚だった

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——今では人気者のGeroさんですが、バイト経験はありますか・・・?

色々あります! スーパーの品出し、カラオケ店員、派遣、ライヴ設営と色々やりました。実家が塗装業だったので、上京直前まではその手伝いもしたし、東京に出てきてからは音響会社で働きました。

——バラエティ豊かですね! ちなみに動画投稿はどのタイミングで始めたのでしょうか?

2008年が初投稿なんですけど、上京直前の塗装業のバイトをしていた頃ですね。ほかのバイトはまだ投稿を始める前だったので、お金は学費とか遊びに使っていました。初投稿した時期は、理学療法士を目指して勉強をしていたんですけど、そこまで大変ではなかったので土日がめちゃくちゃヒマだったんですよ(笑)。だから、動画を録れる友だちにお願いして土日を丸々使ったりして始めました。

——動画投稿に興味をもったキッカケは?

当時はまだニコニコ動画もできたばかりで、youtubeも知る人ぞ知るみたいなアンダーグランドだったんです。僕は弟に教えてもらったんですけど、馬の仮面をかぶって草を食べてみたり、無茶苦茶な動画がいっぱいあがっていたのが衝撃で。歌を歌っている人もたくさんいましたね。ただ、当時は、ガラケーだったし、パソコンを持っている人も少なくて、動画を見ようとしても映像がカクカクってちょっとずつしか見られないような時代だったんです。でも“こっそり集まって楽しむ秘密のサイト”みたいな。“激アツな面白いおもちゃがあるぞ、俺も混ざりたい!”っていう感覚で飛び込みました。
 

最初は、動画投稿者が出ているイベントライヴに出るのが目的だった

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——投稿を始めた当初は、1曲につきどれくらいの時間を要していましたか?

歌を録音して、ミックスして、動画と音源を合体させて投稿サイト用にエンコード(変換)する作業があるんですけど、昔は1曲歌うだけでもかなり時間をかけていました。何時間もかけて歌ったものを3分程度の曲に仕上げるんですけど、ミックスで1週間くらいかけたり、動画をイチから作る時は、アニメーションから作ってもらって、完成までに10ヵ月かかったものもあります。

——最初に投稿した時からすぐに再生数は伸びたんでしょうか?

少しずつですね。当時は、投稿動画で有名になった人たちが集まってイベントライヴをしていたんですけど、それに出たかったんですよ。1年やってダメだったら辞めようと思っていたんですけど、ちょうど1年目の月にライヴに呼ばれて、それは嬉しかったですね。

 

音響会社でバイトをしながら、所属アーティストとしても在籍

——そこから歌い手を目指した経緯も教えてください。

理学療法士の学校に受かった時に、結婚しようと思っていた彼女にふられて自暴自棄になって、将来“まっくら”みたいに思っていた時期があって。その時に、ライヴで知り合った音響会社の社長に「東京に来ない?」って誘ってもらいました。まだ当時は歌い手がメジャーデビューできるとは誰も思っていなかったけど、みんないつか叶うといいなと心のどこかでは感じていたと思います。上京後は、音響会社で毎日8時間以上バイトをしながら、所属アーティストとしてCDを出したり、ツアーを廻らせてもらいました。歌い手としては、まだ誰も握手会とかツアーをやっていなかったんですけど、その社長の後押しが大きかったですね。

——毎日8時間もバイトをして、アーティスト活動との両立は大変じゃなかったですか? また、音響会社では、どんなバイトをされていたんでしょうか?
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まったく大変じゃなかったと言えば嘘になりますが、それ以上に楽しかったし、勉強にもなりましたね。バイト先が声優さんのヴォイスを録っている会社だったので、僕はドラマCDとかゲームの音声を編集するバイトをしていました。それまで動画作成は友人に任せて自分ではしていなかったので、そこでエディット作業のいろはや、音楽理論、機材についても色々教えてもらいましたね。“もし歌い手としてダメになったとしても、こういう仕事があるから覚えておきなさい”っていう社長の優しさもあったんだと思います。

その会社では、与えられた仕事の納期さえ守れば、備え付けのスタジオを借りて自分のレコーディングをしてもよかったので、バイトの合間に収録や打ち合わせが出来たりと、環境としては恵まれていました。ちなみに、バイトを定時であがったあとに、翌朝の地方公演のために、そのままマネージャーさんの運転する車に乗り込んで会場に向かったこともよくありました。ほぼ寝ずに会場に向かっていましたが、充実していて楽しかったですね。

 

新しいことを知りたくて、いつも“なんでなんで?”って言ってた(笑)

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——めまぐるしいスケジュールですね・・・。ちなみに、そのバイト先では具体的にどんなことを教わっていたんでしょうか?

エンジニアさんがいて音を波形で見せてくれたり、僕も自分から「これはなんですか?」とか「これはどうしてそうなるんですか?」って聞くタイプだったので、いっつも「なんで?なんで?」って言っていた気がしますね(笑)。教えてもらったことを元に自分で調べたりもして、知識欲はすごかった。今は自宅にも機材を揃えているんですけど、マイクとかは未だに色々と調べますからね。友達同志で動画をアップしていた時は、“なんでこんなに音質が悪いんだろう”とか、“もっと声がよく撮れるマイクってなんだろう”って、それなりに悩みがありました。でも、こうしてバイトを通して沢山質問して自分でも調べることで、わかることが増えていったのは気持ちよかったです。

——それだけ忙しいスケジュールで、辛くなる記事もなく・・・?

それが、ずっとめちゃくちゃ楽しいんですよ。みんなが歌えるコンテンツだからこそ、自分はどういう風に表現できるのか毎回考えるし、反応があたらニヤッとするし、逆にもっとやりたくなるというか(笑)。音楽という軸があって、それ以外にも毎日違うことができる。この仕事を始めて“面白くない”と思ったことは1度もないんです。始めた当初も、“せっかく自宅でできる機会があるのに、こんなに楽しそうなことをなんでみんなやらないんだろう?”って思っていましたからね(笑)。

どんな経験も自分のやりたいことにつながる

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——好奇心の強さが今のGeroさんを育てているのかもしれないですね。

そうですね。どんなことも、経験して無駄なことなんて僕は1つもないと思うんです。むしろ、良かったことのほうが圧倒的に多い。例えば、バイトで荷物の梱包をした時は、2時間でこなす仕事を1時間で終えて休憩していたり・・・。他の人の倍の量を常に短時間でこなしていたら、そういったことが許されてきて。ルールはあるけど、結果を出せば自由が認められるんだなと思ったし、効率化を考えるのも楽しかったですね。その1つ1つが全部今の”やりたい仕事”に生きていると思うんです。動画投稿もバイトも経験してこそ分かることがたくさんあると思うので、楽しみながら、いろいろと挑戦してみてください!

 

■Profile

Gero

兵庫県生まれ。力強いパワフルな歌声で、低音からハイトーンまで4オクターブを自在に操る歌唱力に定評がある。動画投稿サイトで話題を呼び、歌手としての活動を開始。2013年にTVアニメ「BROTHERS CONFLICT」OP曲「BELOVED×SURVIVAL」でメジャーデビュー。精力的にLIVE活動を行っており、海外公演も増加中。また、関西仕込みのトーク力を活かし、各種メディアでMCやパーソナリティとしても活躍している。

◆Gero OFFICIAL SITE:http://gero-official.jp/
◆Gero Official Twitter:@Gero2525

 
企画・編集:ぽっくんワールド企画/森 晶
撮影:河井彩美
取材・文:原千夏
Hair&Make:井原結衣

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