ハロー!プロジェクト「アンジュルム」の中心メンバーとして活躍後、舞台女優を目指し2016年に卒業。現在は舞台を拠点に、幼少期からずっと好きだという歌の世界でもソロデビュー。楽曲インタビューほか、歌うことの魅力や、演じることの醍醐味など、仕事観についても伺いました。
応援ソングではあるけれど、夢に向かうまでの過程や孤独を描きたかった
——「輝いて〜My dream goes on〜」でソロデビューされますね。
デビューが決まった時に、レコード会社のスタッフさんが曲をたくさん用意して下さったんですけど、その中で満場一致でこの曲に決まりました。私の好きなミュージカル調にアレンジしていただくなかで、壮大な楽曲に仕上がりました。
——歌詞の中に、夢を目指して進むまでの葛藤と、希望の両方が描かれているのが印象的でした。
歌詞を作っていただく前に、作詞家さんにいろいろと自分の気持ちをお話しさせていただきました。希望だけではなく、そこに向かうまでの葛藤や苦悩とか、その過程も表現した応援ソングを歌いたいとお願いしました。歌詞には“独りきり”というフレーズがあるんですけど、孤独って誰しもが感じる部分だと思うんです。孤独を悲しむことより、その孤独とどう向き合うかということが大切で、そこを表現することにはこだわりました。
——ミュージカルとポップスの融合であり、壮大な楽曲になっていますが、歌い方も工夫されたのでしょうか?
テクニックを必要とする歌なので難しさはありましたが、ずっとミュージカルが好きだった私の真ん中にある歌い方というのが、この曲には自然と出せたと思います。レコーディング中は、立ち止まることなく、ずっと前に歩き続けるイメージで歌ったので、その力強さも伝わると嬉しいです。
——2曲目の「Summertime」は作詞にも挑戦されたということで。
作詞はやってみたいことの一つでした。この曲は、ライヴで盛り上がれるような楽しい曲にしたくて、曲調もアップテンポなものを選んで、あえて耳ざわりのいい言葉を意識して作りました。作詞をするうえでは、“心に正直でいる”“嘘をつかない”ということを大事にしました。でも、だからこそ心の中を見透かされているようで恥ずかしさもあるんです(笑)。これからアーティストとして歩んでいく上で大きな一歩になったと思います。
——通常盤には、ボーナストラックとして名曲「Lovin’you」のカヴァーが収録されていますね。
小さい頃から、母がよく車でかけていた曲で、イベントでも歌ったことのある大好きな曲です。歌詞の中にある“好き”という気持ちをいっぱい込めて歌いました。すごくバリエーションのある3曲を収録できたと思っています!
母に連れていってもらった舞台で、憧れや夢を抱くようになった
——では、ここからは仕事への向き合い方をお伺いしたいのですが、歌や舞台を好きになったのは?
歌はずっと大好きで、小さい頃の映像を見ても、どれもずっと歌っているんです(笑)。母が、地元にミュージカルや人形劇が来たら必ず連れて行ってくれて、家にも劇団四季のビデオがたくさんありました。そういうエンターテインメントに触れることで、心が豊かになるようにという思いがあったらしいんですけど、物心がついた頃には、舞台女優になりたいと思っていましたね。
——夢を見つけるのが早かったですね!
はい。でもその時はまだ、“戦隊モノ”とか“セーラームーン”に憧れる感覚で、実際の女優さんになれるとは思っていなくて、魔法の世界みたいな感覚だったんです。6歳の時にミュージカルのオーディションを受けたんですけど、他の子たちがスクールに通っていることを知って、私もスクールに通い、ミュージカルのオーディションを受けに行くようになりました。
舞台という空間にいられるのが楽しくてずっと魔法の中にいるみたいだった
——当時、舞台に立ってどんなことを感じていましたか?
その頃はまだ遊びの延長みたいなところがありましたね。練習は厳しい部分もあったんですけど、なにより舞台という空間にいられるのが楽しくて、ずっと魔法の中にいるみたいでした(笑)。
その後、小学5年の時に出たミュージカル『しゅごキャラ!』で、スマイレージ(現・アンジュルム)の初期メンバーと共演して、初めてアイドルという存在に接したことで、可愛くて優しくて本当に感動したんです。2期メンバーを募集することが発表された時に、自分も挑戦してみようと思い、オーディションを受けてスマイレージとして活動することになりました。
——小さい頃から舞台に触れていますが、お仕事をしているという感覚はあったのでしょうか?
徐々になんですけど、スマイレージに入った頃から意識は強くなりました。それまでは、オーディションに行って受かったら舞台に立つという形だったんですけど、スマイレージに入ってからは毎日がお仕事でしたし、自分たちの発言や行動、コンサート1つをとってもたくさんの大人の方(スタッフ)が動いてくれていたり、応援してくださる方々がいることを目の当たりにしたことで、少しずつ仕事をしているという意識が強くなりました。
歌の可能性は無限だからこそ、触れれば触れるほど葛藤は生まれる
——アイドル卒業後は、舞台女優を目指して活動されていますが、舞台女優とソロアーティストというお仕事の両立はいかがですか?
それぞれに自分と向き合う方法が違うので、両者の魅力を感じています。アーティストは、自分というものを歌を通して全面に出せますし、役者ではストーリーによって色んな感情に触れることが出来る。稽古場だけだと、役に入り込みすぎてしまうし、アーティストだけだと自分本位になりすぎてしまうと思うので、今の環境には本当に感謝しています。
——歌うことに苦手意識が出たり、辛いと感じた時期はないのでしょうか?
最近ですね。それまでは、ずっと楽しいだけだったんですけど、デビューが決まるちょっと前から、“自分の歌ってどんなものなんだろう?”と向き合うようになって。歌のうまさも大切ですけど、人の心に何かを伝えられる歌を歌いたいんです。歌の可能性は無限にあるからこそ答えはないなと。“歌から湧き出てくる感情”や“そこにどんな思いがあるのか”という疑問は、歌をずっと続けていく限り向き合うものなのかなと思っています。
表現の世界にいるからこそ、人の歪みも愛せるようになった
——この仕事をしているからこそ気付けたことはありますか?
歌うことや演じることは、人の本質を知ろうとすることでもあると思っていて……。誰にでも二面性ってあると思うんですけど、演じたり歌うことで、人間の歪んだ部分や汚い部分を美しいとか愛おしいと感じられるようになりました。そういうのは表現の世界にいないと分かり得ないことだったなと。分かったとしても受け入れられなかったなと思います。
——歪みの美しさですか?
人の感情って色々あるから、いつも優しいだけではいられないし、嫉妬心や、怒りの感情、ネガティブな思考とか何かしらあると思うんです。その感情には、そうなる理由もあるだろうし……。表現することで、人の本質に向き合うことができるのはこの仕事の醍醐味だと感じています。
人の気持ちを動かすのは“感動”だからこそ、熱意を持って相手に伝える
——では、周囲の人と仕事をするうえで大切にしてることはありますか?
私は今19歳で、スタッフさんたちは年上の方が多いんですけど、人の持つ説得力って、経験という年齢に比例しているところがあると思うんです。なので、たとえば“大人が全然理解してくれない!”って思ったとしても、それは当たり前だと思っていて。“なんで分かってくれないの!?”って討論したり怒るより、“どういう言い方をしたら伝わるだろう”、“どうしたら分かってもらえるだろう”って考えるようにしています。
——自分本位になりがちですけど、すごくハッとさせられます。
少し大げさな言い方になっちゃうんですけど、人の気持ちを動かすのって感動だと思うんです。なので人に何かを伝える時は、熱量とか気持ちをまっすぐに伝えるようにしています。そうやって理解してもらえたら周囲の人たちも力になってくれると思うので、これから夢を目指す方にも是非トライしてみてほしいです!
田村芽実(たむら めいみ)
2011年にハロー!プロジェクト「スマイレージ」(2014年にアンジュルムに改名)としてデビュー。高い歌唱力と表現力で中心メンバーとして活動。幼少時からの目標であるミュージカル女優になるため、2016年5月の日本武道館公演にて、「必ず大きく深みのある人間になってステージに戻ってくる」と宣言し、アンジュルムを卒業。現在19歳となり、ソロとしては初めてのCDリリース。ソロデビュー曲のテーマは、ミュージカルとポップスの融合で、スケールの大きなナンバーが完成。カップリング曲では、自ら作詞にも初挑戦! ミュージカル女優としても、シンガーとしても、いずれも超一流をめざす“二刀流ディーヴァ”として、新たなストーリーを歩む。
◆田村芽実 OFFICIAL SITE:http://tamurameimi.com/
◆田村芽実 OFFICIAL Twitter:@Tamura_Meimi
企画・編集:ぽっくんワールド企画
撮影:Kuro
取材・文:原千夏
衣装協力:ワンピース(Libby&Rose 03-3477-5169)、イヤリング(GOLDY 03-6447-4180)