日本一オメでたい人情ラウドロックバンド“オメでたい頭でなにより”。バンドの殆どの楽曲で作曲を手がけるギターの324さんに、音楽の道1本でいくことに決めたバイト中のまさかのエピソードや、新曲「日出ズル場所」の制作エピソードをお伺いしました。
ちゃんこ鍋の“ごった煮”感は、自分たちの音楽性にも通じる
——新曲「日出ズル場所」はどのように生まれたのでしょうか?
TVアニメ『火ノ丸相撲』のエンディングになると決まった時に、漫画を全巻買って、メンバーみんなで読んで「どういうところが、心に残った?」という話し合いから始めました。話し合うのはいつものスタンスなので、他のバンドに比べると、メンバー同士の会話は多い方かもしれないですね。
——そこではどういったお話を?
僕たちも最初から音楽活動が順風だったわけではないので、主人公の思いとか、ストーリーの背景にすごくシンパシーを受けたり、困難や自分自身を超えて進んで行くという強い気持ちが重なったので、その部分はメンバー同士でも話しました。それと、ストーリーの熱量をライヴにも活かしたくて、テンポ感のあるダンスミュージックを基調に、自分たちらしさの出せるラウドとミクスチャーの要素を取り入れた楽曲にしました。
——324さんが作曲されていますが、曲作りのコツはありますか?
僕は作曲する前の“考える時間”を大切にしています。パソコンのソフトを立ち上げた段階ではすでに構想ができていて、それを音にしていく感じなんです。
——歌詞には、「日本独自のオメでたい文化」を発信するみなさんならではの“具材 煮える 味 染み込んだ”というフレーズもあって……。
ここで「ちゃんこの歌なんだ!!」ってなりますよね(笑)。赤飯(vo)とぽにきんぐだむ(Gt/Vo)の言葉遊びも面白いなと思います。
——ちなみに、ちゃんこの思い出はありますか?
MV撮影の時に、実際にグツグツのちゃんこを使って撮影したんです。体力がなくなってお腹がへった状態の時に、みんなで食べた時は“助かったぁ”って(笑)。曲を作っている段階では、ちゃんこが絡んでくるとは思っていなかったんですけど、でも“ごった煮”感は、我々の音楽性も表していると思うので、すごく納得できるものになっています!
——そして、カップリング曲も個性豊かですよね。
「We will luck you」は、7月のZeppDiverCityでワンマンライヴをする前に作ったんですけど、今まで応援してくれた人たちに、あの場で感謝の思いを伝えたかったんです。合唱があったり一緒にノれたりと、会場で初めて聴いても楽しめるような曲にしました。
——「サイレントとジェラシー」も展開が多くて聴き応えがありました。どの楽曲も遊び心満載でありながら、まずは曲の良さが耳に入ってくるのが印象的です。
良い意味での展開の裏切りとか、面白さはいつも考えています。ただ、それをするためには、ちゃんと演奏ができてカッコイイ曲をやっているという前提がないと何も伝わらないと思うので、土台はしっかりしたものを作りたいなと思っています。ライヴでも“楽しませたい”という思いは常にあるし、そこは徹底しつつ、来てくれた方の人生に音楽で寄り添えたらいいなと思っているので、ぜひ一度遊びにきて下さい。
おちょことチョコ事件——音楽で生きることを決めた決定的瞬間!?
——では、ここからはバイト経験について聞かせて下さい。
初めてのバイトは19歳の時のコンビニ店員で、その後は飲食店で働いたんですけど、そのバイト中に、“おちょこ”と“チョコ”を間違えるという失敗をしまして……(笑)。「おちょこ持ってきて」って先輩に言われて、チョコの盛り合わせを作っていたら、「それ違うから!」って言われて、“あっ、俺普通の仕事できないな、音楽しかできないんだ!”って悟ってしまったんです(笑)。その飲食店は、けっこう長く働いていたんですけど、その出来事で何かが吹っ切れたんでしょうね。“これからは音楽で生計を立てよう!”って思った瞬間でした。
——音楽は学生時代から始めていたんですね。
高校を卒業して大学に入ったくらいから、もうギターのお仕事はいただいていました。でも、プロになろうというよりは、まだ流されるままにやっている感じでしたね。バイトはしつつも、大学を卒業する頃には音楽で生計をたてられるくらいにはなっていました。
プロ仕様の作曲機材を買うための目標金額は100万円
——ではバイトは大学時代までですか?
その後に治験(薬の効き目を臨床的に確かめる検定)のバイト(*注)をしています。大学を卒業して、音楽に関する仕事の幅を広げるために、作曲を本格的に始めるんですけど、そのためにプロ仕様の機材を買いたかったんです。
——どんなお仕事内容なんでしょうか?
僕がやったのは、ビールを飲んで血液検査をしたり経過観察をするっていうものでした。それは2回通院しただけなんですけど、ほかに入院するものもありました。
*注)治験バイトは、有料のボランティアになります。
治験のバイトで、やることがないのは“逆にしんどい”ことに気付いた
——治験を選んだキッカケは?
まずは給料が高かったこと。あとは、友だちがやっていたし、人の役に立てるものでもあるので思い切って応募しました。募集によって、体型が決められていたり面接もあるんですけど、特には問題なかったですね。バイト中も、大事なのは規則正しい生活をすることくらいでした(笑)。
——治験のバイトをしてみて感じたことはありますか?
1泊2日を病院で過ごした時に、“やることがないのってすごく辛いんだな”って思いましたね。ケータイは使用できるし、漫画もあるんですけど、いざそこで過ごすとなるとやっぱりヒマになっちゃって。たとえ忙しい環境のバイトだとしても作業がある方が、個人的には絶対面白いなと(笑)。結局、パソコンを持ち込んで曲を作ったりはしていたんですけど、作曲をすると昼夜逆転になりがちなので、あまり向いてはいなかったですね。
——ちなみに、100万円を貯めた時はどんな気持ちでしたか?
すごく嬉しかったですね! 実際に溜まった時は、“これも買える、あれも買える、どうしよう!”って(笑)。でも、その後の口座からの減り方は尋常じゃなかった。
——ちょっともったいなく思ってしまったりは?
少しはありましたけど、始める前から“100万円が貯まった時点でバイトは辞めよう”と決めていたんです。やっぱり時間は無限にあるものではないので、音楽のためのスキルアップを選びました。
——まさに目的のためのバイトだったんですね。
そうですね。目的意識はあったほうがいいと思います。僕は早く機材を揃えたいという目的があったから、給料の高い治験を選んだんですけど、もし漠然と音楽に関わる仕事がしたいと思っている段階だったら、たとえばコンサートスタッフとか、レーベルとか、音楽に近い場所でのバイトを選んでいたと思います。
レストランは独特の雰囲気をもった方たちに出会えるのが楽しかった
——バイトをしてみて、面白いなと感じたことは?
僕が働いていた飲食店は、ホテルの最上階の展望レストランで、ワインも豊富にあるような、ちょっといいレストランだったんです。店員も正装で、みんな髪もオールバックで固めているようなところだったんですけど、そういうところって、他の飲食店とは少し雰囲気が違うんですよね。オシャレな人とか、独特な個性を持った方とかも多い。その中の常連さんで、いつもパンとコーヒーを1杯頼んで、ずっと外を眺めている方がいて。その方は作家さんだったらしいんですけど印象的でしたね。
——ある意味、曲を作る前の324さんと同じですね!
確かにそうですね(笑)。特に会話をするわけでもないんですけど、人それぞれの空気感というか、いろんな人の人生をのぞき見できるっていう意味では面白かったなと思います。
接客業をしたことで人に対して寛容になれた
——では、最後にバイトを通して学んだことを教えて下さい。
接客業をしていると、いろんな方がいるので、理不尽なことを言われたりクレームってやっぱりあるんですよね。そういう時は、ケンカ腰になるより、“こういう人もいるんだな”って思うようにすることで、人に対して寛容になれた気がします。それは自分がお客さんの立場になった時も同じで、相手に対する気遣いとか優しさは、接客業をしたことで身についたんだと思います。
オメでたい頭でなにより
日本一オメでたい人情ラウドロックバンド、オメでたい頭でなにより。
赤飯(ボーカル)、ぽにきんぐだむ(ギター&ボーカル)、324(ギター)mao(ベース)、ミト充(ドラム)の5人組。彼らは”オメでたいコア”略して「オメコア」を武器に、日本一オメでたくて汗だくで騒げるバンド。コンセプトは、一人でも多くの人に「楽しく、幸せに騒げる、底抜けに自由でオメでたいバンド」となるよう精力的に活動中!
今年の4月4日に「鯛獲る」でメジャーデビュー。
324は個人として、作編曲家としても活躍中。
◆オメでたい頭でなによりOFFICIAL SITE:http://www.omedeta.band
◆324 Official Twitter:@sandai324
企画・編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:原千夏