人気アイドルあのちゃん(ゆるめるモ!)インタビュー 「社会の中で生きられない。ぼくが見つける居場所」

最近話題の女性4人組ニューウェーブアイドルグループ、「ゆるめるモ!」。「窮屈な世の中を緩める(ゆるめる)」をコンセプトに結成されました。今回インタビューするのは、独自の存在感でひときわ目を惹くメンバーのあのさん。従来のアイドルのイメージとは異なる彼女のキャラクターに、多くの人が魅了されています。既存のアイドル像にとらわれず活躍の場を大きく広げるあのさんに、自分自身のお仕事観について伺いました。

「いらっしゃいませ」もうまく言えなかった

——Q アイドルになる前の、あのさんについて教えていただけますか。

不登校だったんで、なにもしてなかったです。 ずっと部屋にいました。集団でいるのが「無理だな」って思って、高校に入ってすぐに学校を辞めてしまったんです。ずっと、周りとは馴染めなかったですね。自分の部屋ぐらいしか居場所はありませんでした。 ただ、このままじゃどんどんダメになっていくなと思ってバイトを始めたんです。

——Q 引きこもりからの脱出のきっかけとしてアルバイトを始めたんですね。その時は何か、欲しいものとかもあったんですか?

モノとかはいらなくって。ただ、普通に生きられる社会性と居場所が欲しかった。 学校に行ってなかったから、どこか学校以外の場所をなんでもいいから見つけなきゃって思ったんです。それで、軽い気持ちでスーパーのレジ打ちのバイトを始めました。ただ、面接がすごく苦手なので、応募するのにも相当な時間がかかりました。そして実際に働いてみると声が小さくて、「いらっしゃいませ」もうまく言えませんでした。上手に笑うこともできなくって。 レジ打ちは得意だったんですけど、接客がなかなかできなかったので店長にはよく怒られました。

「何もないまっさらな状態」の方がスタートしやすいと思った

——Q ゆるめるモ!に入るきっかけは何だったのでしょうか?

Twitterのリツイートで、募集の告知を見て応募しました。 アイドルは興味なかったんですけど、楽器もやってるグループって知って、「音楽が好きな人」とか「お笑いが好きな人」って募集要項に書いてあって、「じゃあ大丈夫かな」って。そしたら、すぐにメールが来て面接に来てくださいって言われちゃったので、しばらくシカトしてたんです。「また、面接か。イヤだな」って。 面接でいろいろ聞かれるのも嫌だったし、その時の気持ちをうまく言葉にできないと思いました。外に出るのも一苦労のひきこもりなのに、アイドルの面接なんてハードルが高すぎるなって。

でも、何度もしつこくメールがきて、一度ライブだけでも見にきて欲しいと言われたんです。ライブに行ってみたら、お客さんは全然いないし楽器もうまくなくて、正直「大丈夫かな、これ」って思いました。

でもテレビや身の回りで見てきたものとは違う、初めて広がる光景で、作り上げられているものが何もなかったから、「少しやってみようかな」って思えたんです。

ぼく、見本があっても同じように出来ないし、何かに溶け込むことがすごく苦手だから。何もないまっさらな状態からの方が何かを始めるにはいいかなと思いました。

——Q ゆるめるモ!が逆に完成していなかったから、あのさんにとってアイドルへのハードルが下がって「やってみよう」と思えたんですね。  

そうなんです。未完成だったからこそ、そこに入れる隙間があった気がしました。 でも、すごく戸惑いました。とにかく全然、喋れなくて。周りのメンバーは、元アイドルとか経験者ばかりだったので、まずは見よう見まねから入りました。

でも、ダンスもワンテンポ遅れてしまったりして周りに合わせるのが大変でした。それで、あのちゃんやる気ないねって言われてしまうこともありました。最初の頃はレッスンの後とかに、よくマネージャーにやめたいって相談してましたね。自分にとっては、キャパオーバーなことばかりですごく大変でした。

「逃げる」ことだって行動力

——Q 新しい環境に馴染むのは大変ですよね。

はい。でもその当時、行動力だけはあったなと思います。行くことを決められていた学校を辞めることも行動力のうちだったのかなって、今は思いますね。人ってポジティブなことばかりにそういう言葉を使うけれど、ある場所から「逃げる」ことだって行動だと思うんですよね。

——Q アイドルになった現在も人と関わることはやっぱり苦手なんですか?

正直に言うと、苦手ですね。人間って、会った瞬間に関わりが生まれちゃうじゃないですか。そして、もっと知りたいと思うにつれて、更に関わるようになりますよね。こうして誰かと関わることで、さまざまな感情が生まれる事が面倒だなって思ってしまうんです。

人と関わると、自分の感情が生まれ過ぎて制御できなくなっちゃうんです。それがすごく嫌でした。傷つけて傷つけられての繰り返しで本当の何かに辿り着ければいいけど、取り返しつかないところまで行ってしまうこともあるから。

それなら最初から関わりを持たない方がいいと感じて、「近寄らないでー」って自分の中で無意識に壁を作ってしまうんです。本当はそういう風にしたいわけじゃないのに。結局、面倒臭い人間なんですよね。

「作る側」の感覚が好きだなって気づいたから

——Qインタビュー冒頭で、「居場所が欲しくてアルバイトを始めた」とおっしゃっていましたが、あのさんが探していた居場所って、見つけられましたか?

ぼく、いつか結局、引きこもりに戻ってしまいそうな気がして不安なんです。ただ今は、音楽やライブもあるし、最近では少しずつ映画やドラマの撮影に携わらせてもらえるようにもなりました。

”作る側”から、ひとつの作品が完成した瞬間を味わう機会をもらって、そのときの感覚が「好きだな」ってことに気づいたんです。これからは自分の中で、少しずつその感覚を育んでいきたい。

探してばかりいるんじゃなくて、もしかしたら自分で居場所って作れるかもしれないって少しだけ思えるようになりました。まだ、そんなに強い言葉では言えないけれど、そんな居場所をこれからはひとつひとつ作っていきたいなって思っています。

 

【あのプロフィール】
ニューウェーブアイドルグループ「ゆるめるモ!」の水色担当。9月4日生まれ。A型。
ファッションショーや雑誌モデル、女優、CM、MV出演、客演ヴォーカル参加など各方面にて活躍中。
大森靖子やテイトウワの楽曲レコーディングにもヴォーカリストとして参加。
個性的なファッションをはじめ、独特の感性から発せられる言葉・パフォーマンスが、若い世代へカリスマ的な影響力を生んでいる。ゆるめるモ!あの ファースト写真集 『ANOther』(集英社)発売中

◆ゆるめるモ!オフィシャルHP:http://ylmlm.net/
◆ゆるめるモ!公式Twitter:@ylmlm_staff
◆あの公式Twitter:@aNo2mass

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