アーティスト・亀本寛貴(GLIM SPANKY)インタビュー 『仕事になったとしても音楽に対する“好き”は変わらなかった』

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昨年は、新人では異例の大抜擢となる映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌を担当し、今年は初の海外ライヴでも入場規制がかかるなど、活躍の幅を大きく広げている GLIM SPANKY!! 9月13日に発売される最新アルバムについて聞いたほか、亀本さんがギターを始めるキッカケともなった意外なエピソードや、これまでのバイト経験についてお話しを伺いました。

 

サイケなものを中心に、より音楽的な広がりを見せた新作アルバム!

――3rdフルアルバム『BIZARRE CARNIVAL』。どんな思いから作られた1枚ですか?

ボーカルの(松尾)レミさんがCMでジャニス・ジョプリンのカバーを歌ったり、去年のアルバムのタイミングで『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌をやらせていただいたり、少しずつ認知してもらえるようになって、ある程度僕たちの形ができてきたところで、“これからどういうふうにやっていこうか”という話は去年ぐらいからしていたんです。

そんな時に、レミさんの中で、よりサイケなものが作りたいという思いがあったので、次のアルバムではサイケなものを中心に、さらにバリエーションを広げた1枚にしたかったし、それはいい形でまとまったんじゃないかと思います。

――今年春のミニアルバム『I STAND ALONE』の頃から、この方向性はあったということですが。

そうですね。僕たちの中に“海外に出てやってみたい”という思いが元々あって。これはよくレミさんとも話していたんですけど、この“サイケデリック・ロック”をアジア人である僕たちがやることで、ロックの本場、ヨーロッパやアメリカの人たちにも届くんじゃないかと思ったんです。そこを普遍的な要素として持ちつつ、アートワークだったり、見た目の要素もブラッシュアップしていけば、可能性が広がるかもしれないという話で盛り上がって、その延長でミニアルバムから音楽的な挑戦を始めました。それがこの3rdアルバムにつながったという感じがします。

 

「THE WALL」は、アルバムの1曲目にしたくて作った曲

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――今回のアルバムで制作が大変だったなど印象的な楽曲は?

楽しいと思う曲しかやっていないので、大変なことはないんですけど、印象的という意味では「THE WALL」ですね。アルバムの1曲目にしたいなという思いがあって、そこを意識して作りました。例えばフェスでやると考えてみた時に、わりとテンポを上げ目で盛り上げるっていうのは定番だと思うんですけど、GLIM SPANKYはそういう見せ方よりも、よりどっしりしたビートで、ある種のスタジアムロック感も出しつつ壮大なものを見せていたほうが、伝わるんじゃないかと。

――確かに、壮大さも感じます。

そこは意識しました。ただ、今回のアルバムの中心となる曲たちと整合性を取るには、少しサイケデリックな世界も取り入れたかったので、イントロのフレーズを12弦ギターで始まる形にしました。そこから導入して親和性を持たせていこうという思いがあって。そういう全体の感じがうまくハマったし、アルバムの中での役割を全うしている大事な曲になったのかなと思います。

 

ギターに夢中になったキッカケは、たまたまバイト代があったから!?

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――さて、ここからはアルバイト経験についてうかがいたいと思います。

はい。アルバイトは、高1から高3までやっていました。大学に入ってからもしましたし、デビューしてからも最初の半年ぐらいはやっていました。

――ギターを好きになったのは高校に入ってからということなので、ギターのためにバイトを始めたということですか?

いえ、それが逆で、バイト代があったので何かを始めようと思ってたまたま選んだのがギターでした(笑)。ずっとサッカー部だったので平日はサッカーの練習をして、土日の夕方にファーストフード店でバイトをしていました。ただ、土曜日は練習試合があったので、その後行っていましたね。

――サッカーもしつつ週2でバイト。

はい、休まずに行っていました。最初の頃のバイト代は、スパイクに費やしていましたね。“今度はクリスティアーノ・ロナウドモデル買おう”とか。スパイクは10足ぐらい買ったと思います(笑)。でも、サッカー以外の趣味を持ちたいなと思った時に、何気なく選んだのがギターだったんです。高1の終わりの春休みにバイト代で買いました。でも、普通に買うと高いのでネットオークションでギター7000円、アンプも3000円。1万円で揃えてとりあえずのスタートだったんですけど、すごく楽しくて。そこからはもうバイト代は全部機材につぎ込むようになりました(笑)。

――その後、ファーストフード店以外でもバイトは?

レミさんにバンドをやるために東京に行こうと言われて、上京してきて最初はホームセンターで半年ぐらいバイトをしていました。あとは、ライヴ会場の設営もやりました。幕張メッセでK-POPグループのライブでしたね。

――その時、将来“こういうステージで俺もやれるかな”という思いは?

ありました。というか、“僕そのうちココでやるんだけどなー”って、設営しながら心の中では思ってました。それくらいの意気込みではいましたね(笑)。

 

バイトで一番長い時期を過ごしたのはファーストフード店

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――他にもアルバイトは?

文房具の倉庫で1日8時間くらいひたすら伝票を見て整理するという仕事をしました。でも、あまりにも誰とも会話することがないので、人と話したいなと思ってまた、ファーストフード店に戻りました(笑)。なので、僕の中ではけっこうファーストフード店にいた時間が長いですね。だからかわからないんですけど、一度、漫画喫茶の新規オープンの開店準備で働いていたら、ファーストフード店で染みついたホスピタリティを感じ取られたのか、“君をバイトリーダーにしたい”と言われて(笑)。“週5で8時間入って”と言われたんですけど、バンド活動もあるので、それはできないなと思って……。そうこうしているうちに、ちょうどドラマの主題歌を書く話が決まったこともあって、バイトはしなくなりました。

――アルバイト経験が今に生きていると思うところはありますか?

粘り強さかな。どこへ行っても合わない人はいるわけで(笑)。環境っていうよりは自分次第なのかなと思えるようなりました。あと、一つ一つの仕事が自分を向上させてくれるので、知らず知らずに今に活きているのかなとは思います。

 

窮屈になった時期は、初心に立ち返ることが必要だった。

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――今は“好き”で始めた音楽が今“仕事”としてあるわけですが、仕事としての音楽をどうとらえていますか?

好きな音楽が“仕事”となった時に、“好きなことだけを押し進めるわけにもいかない”みたいな考え方があるのはわかるんですよね。僕も一時期“受けがいいのは、もっと盛り上がる感じの曲だから、こうしたほうがいいのかな”みたいなことばかり考えていたことがあったんです。でも、そうやって曲作りをしていくと、ちょっと窮屈になってくるんですね。選択肢が狭まってしまう。だから、そういうことは一回ナシにして、楽しんで“この音好きだわー、かっこいいわ”ってそういう感覚で音楽を楽しんでみようと思って、1回アナログレコードを買いまくったんです。まずは、音楽を“聴くのが楽しい”っていうところに立ち戻って、その気持ちを前提にした上で曲作りに向き合っていくようにしたんです。

――それが今回のアルバム作りにもつながったのでしょうか?

そう思います。やっぱり数字を意識してばかりでは、ミュージシャンを10年20年やるのは無理だと思うんです。ずっと続いている先輩を見ると、みんな子供みたいに音楽が好きだったりするんですよね。“音楽が好き”というエネルギーが枯れたら、その瞬間終わりだと思うので、そこに立ち返るというのは仕事を続ける意味でも大事なことだなと思っています。

 

■Profile
亀本寛貴(かめもとひろき)

ロック、ブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす男女二人組ロックユニット・GLIM SPANKY(グリムスパンキー)のギタリスト。今作のアルバムでは、すべての楽曲の編曲を担当しているほか、ライヴでみせるブルージーで感情豊かなギター・ソロパフォーマンスにも定評がある。

【HP】
GLIM SPANKY OFFCIAL SITE:http://www.glimspanky.com/
亀本寛貴 Twitter:@glim0kamemoto

編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:田部井徹

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