2017年の流行語大賞にも選ばれた「インスタ映え」は、今年も勢いが止まりません。その一方、改めて撮影の基本を聞かれると、思わず首をかしげてしまう学生さんも多いはず。そこで今回はすぐに実践できる撮影と加工のテクニックを、プロカメラマンさんに教えていただきました。
舞台は「instagram」上でも大人気の「ことりカフェ 吉祥寺店」。バイトのない日や講義の合間の空き時間にもぜひ立ち寄りたくなるような空間で、ことりたちと特製メニューをモチーフに、プロ直伝の基本テクニックを学んでいきましょう。
ことりの可愛さが詰まった「ことりカフェ 吉祥寺店」
「ことりカフェ 吉祥寺店」はことりたちとひとときを過ごせるカフェです。自由気ままに暮らしているインコや文鳥を眺め、ときにはふれあいながら、オリジナルフードやスイーツを楽しむことができます。
Ⅰ 今日から実践! インスタ映え三原則-撮影テクニック編
レクチャーしてくださるのはプロカメラマンの小野奈那子さん。最近では仕事でもインスタ映えを意識した撮影をすることも多いのだとか。そんな小野さんから最初に教えていただいたのは、インスタ映え三大原則『光源・レンズ・構図』です。こちらはインスタのみならず、普段の写真撮影でも活用できるテクニック。ぜひマスターしてみましょう。
1.光源について
被写体を照らす光を光源と呼びます。この光源の位置でモチーフの写り方は全く違ったものになります。おすすめしたいのはサイド光です。
まず、こちらが順光(正面から光が当たっている状態)の写真。被写体が平面的に見えてしまいぼんやりした印象に……。
そしてこちらがサイド光の写真。横から光が差し込むことでモチーフの陰影が強調され、立体感が際立ちます。
さらに店内の撮影で注意すべきポイントとして、できるだけシンプルな光源を用いることが挙げられます。光源の種類には大きく分けて2種類、自然光と蛍光灯があり、これらが混在している場所での撮影は高度なものになってしまいます。
この日の撮影にベストな場所を探した結果、当日は大きな窓から自然光が差し込む席で行うことになりました。
2.レンズについて
実は多くのスマートフォンのレンズは、標準状態で撮影すると広角(広い範囲を撮影する状態)で映ってしまいます。そのため近くに映ったものが歪んでしまうのです。
こちらが広角で撮影した写真。よりコップのフチが強調されているのがわかります。
こうしたことを防ぐためにも、少しだけズームし撮影してみてください。すると望遠レンズに切り替わるので、形の歪みを防ぐことができます。
こちらが望遠で撮影した写真です。少しだけズームし被写体から離れて撮影することで、より目に写った通りの写真を撮ることができます。
3.構図について
構図に正解はありませんが、インスタグラムで一覧表示したときに、画面が単一化しないようにさまざまな構図で撮影することを心がけてみましょう。ひとつのモチーフでも極端に接写してみる、あえて引いてみるなど色々な試みをしてみるのがポイントになります。
こちらが引きの写真。
極端に寄った俯瞰の絵もユニークです。
ちなみにグリッドの表示設定を行うことで、ガイド線によって画面を9分割し表示することができます。対象物の水平や平行などが一目瞭然となり、全体の構図がより掴みやすくなるため、理想の写真に近づきやすくなります。
Ⅱ ときめき空間で撮影に挑戦〜実践編〜
3大原則「光源・レンズ・構図」を学んだところで、早速ことりと直接触れ合える「もふもふの部屋」で撮影に挑戦してみましょう。被写体はそれぞれ性格も異なることりたち! 実際に触れ合うことで、見るときだけでは引き出せなかった表情を捉えられるかもしれません。
1.ふれあいながらことりの表情をキャッチ
最初に遊んだのは優しくて陽気な男の子、オカメインコのいくらちゃん。
「彼は人懐っこいので、ことり初心者でもすぐに仲良くなれます。音に反応する子なので、歌ってあげると反応してくれます」とスタッフさん。
無邪気ないくらちゃんはケージから飛び出すとすぐに筆者の腕や頭の上へ。
意表をつく“ことり on the ヘッド”! これぞインスタ映えショット
愛嬌満点の表情も見せてくれました。
こちらはホオミドリアカオウロコインコのうにちゃん。少しだけシャイですが仲良くなれば握手もしてくれます。
「慣れればこんなことをしてくれますよ」とスタッフさん。お手をするうにちゃんの姿まで見せてくれました。心が通じて嬉しい一幕です。
2.可愛さ満点! セキセイインコカレー
写真にすると平たい絵になりがちのカレーですが、ことりカフェの特製カレーはセキセイインコに見立てた立体型のライスがフォトジェニック! ちょこんとカレーの中に座るセキセイインコを強調するように撮影することで、メインの被写体が引き立ちます。
構図を変えて撮影してみます。少し引いて、全体のスケール感を出します。その中でぽつんと引き立つインコのかわいさもインスタ映え抜群です。
3.鳥かごの中の特製ことりケーキ
鳥かごの中に入って運ばれてきたセキセイインコチーズムース。食べてしまうのがもったいないほど可愛く、中には立ち上がって撮影するお客さんも。
真上から撮影するとテーブルの模様も効果的です。
ことり柄のティーセットもキュート。
Ⅲ 発想の逆転がインスタ映えへの近道? 加工テクニック編
撮影が終了したあとは、加工に挑戦です。今回は手動での加工方法をご紹介します。手動加工はフィルター加工よりもワンランク上の仕上がりになるためおすすめです。
「編集」モードへの切り替えは、インスタで投稿する写真を選択しフィルター選択画面へ進みます。その際に画面右下の「編集」の文字をタップすると、調整ツールが表示されます。
明るさやコントラストといった一般的な調整以外にも、ユニークな加工を行うことができるのがインスタの特徴。ここではさらに写真のオリジナリティがアップするツールを見ていきましょう。
・ストラクチャ…被写体の質感がより強調され、絵画風の仕上がりに。風景写真におすすめ。
・色…写真に各色のフィルターをかけることができます。写真の雰囲気がガラリと変化します。
・フェード…もやがかかったような、淡く優しい印象へ。小野さんも気に入っているツールなのだそう
・ビネット…四隅が暗くなり、よりシックな雰囲気へ。中心の被写体を強調する効果があります。
・チルシフト…選択範囲外のピントをぼかすことのできるツールです。写真の一部を強調することができるほか、遠近感を生み出すことができます。
風景や物撮りなど一般的な被写体は、傾きや明るさ、コントラストを調整したあとに、上で紹介したようなツールを用いて、思い思いのイメージに近づけていきましょう。構図と同様に、加工方法にも正解はありません。ツールを組み合わせ、とっておきの1枚を見つけてみてはいかがでしょう。
ここで小野さんからワンポイントアドバイス。お料理であれば、一般的な加工にプラスし「明るさ・暖かさ・彩度」を強めに調整することで、美味しさが強調されるのだとか。お料理を撮影するときに覚えておきたいテクニックですね。
先程の特製カレー写真により温かみをプラスしたもの。
今回はそんな“美味しそう”“かわいい”の一歩先をゆくアドバイスもいただきました。例にしたのはいくらちゃんの写真。
画面右の大胆な空間といくらちゃんの表情がどこかミステリアス。
一般的に可愛さを引き出すために暖かい雰囲気の写真にしがちですが、ここではあえて寒色系に加工し、ギャップを狙った写真にしてみます。
暖かさをマイナスし、フェードをプラス。ハイライトや影を調整し、白っぽい印象へ導きます。
有機物に無機質感を演出することで、構図とマッチした一枚が出来上がりました。
素直な印象を表現するのも、現実との違いを楽しむのも一興。手動での加工でインスタの楽しみ方も無限に広がっていきますね!
Ⅳ いいね数じゃない! 自分だけのインスタ映えを探して
方法やテクニックをご紹介してきましたが、改めて大切にしてほしいのは初心の楽しむ気持ちです。どれだけ技術力が向上したとしても、心からときめく被写体でなければインスタで映えることはありません。可愛さときめきがぎゅっと詰まった「ことりカフェ」が、屈指のインスタ映えスポットと呼ばれる由縁はここにありました。
いいねの数に囚われない自分だけのインスタを、とっておきの場所で。ぜひ、バイトが休みの日や講義の合間の空き時間に試してみてはいかがでしょうか。
【参考リンク】
ことりカフェ:http://kotoricafe.jp/
http://menulist.mb.softbank.jp/feature_20170925/
取材・文:大城 実結
編集:末吉 陽子
撮影:小野 奈那子