「直面する課題が原動力」海外ボランティア・インターンを経て大学在学中に起業! 目指すのは”心の拠り所となるプラットフォーム”

直面する課題が原動力。心の拠り所となるプラットフォーム構築を目指す若き起業家の道のり
趣味特化型SNSの運用を手がけるIT企業「STELLA」のCEOを務める若き起業家、福吉 真之(フクヨシ マサユキ)さん。仕事に取り組むうえで、情熱を持って仕事をすること、地道な作業も一つ一つこなして一歩ずつ前に進んでいくことを大切にしていると言う彼が、“時給稼ぎ”のために始めたアルバイトから学んだこととは?数々のインターンをこなし、起業するに至った原動力とは?

ビジョンの達成に向けて粛々とはげむ毎日

STELLA代表取締役福吉 真之さん
――まずは現在のお仕事について簡単に教えてください。
2019年の1月に株式会社「STELLA」を立ち上げ、8人のメンバーとともに、趣味特化型SNS「シンクロ」の運用を主に行なっています。現時点では、特定のアイドルグループのファンの方に向けた非公開サービスとして展開していますが、今後はスポーツファンやアニメファンなど、共通の趣味を持つ方々が集えるようなプラットフォームへと成長させたいと考えています。

――高成長が見込まれる有望なITベンチャー企業という印象ですね。どのようなビジョンを持ってサービスを作られているのですか?
株主の方々の期待にこたえるためにも、「高成長していかなきゃいけない」という責任はありますね。その責任を持ちながらメンバーと一緒に熱量を持って取り組み、爆発的な成長を目指してがむしゃらに突き進みながらも、事業の拡大・事業目標(KPIなど)の達成に向けて一歩一歩、地道に前進する日々ですね。

僕らの会社では「心の拠り所が生まれるプラットフォームを作る」というビジョンを掲げています。スマートフォンの普及によってインターネットに誰でも簡単に接続し、たくさんの情報に触れることができる時代になりました。その結果、価値観の細分化が起こり、身近な人と“好き”を共有できない状況が生じるようになったと考えています。

なかには、“好き”を共有して発散することができずに困っている人もいるはずです。だからこそ、オンライン上で“好き”を通して多くの人と交流し、最終的に自分にとっての心の拠り所と思えるような場所が生まれるプロダクトを提供することには価値があると考えていますね。

興味に任せていろいろな仕事を体験した学生時代

STELLA代表取締役福吉 真之さん
――最短距離で起業に至ったようにお見受けしますが?
決してそんなことはありません。学生時代はウエイターやテニスコート管理、引越し手伝い、ホスト(体験入店のみ)など、いろいろなアルバイトを経験しました。その当時は自分が起業するなんてまったく思っていなかったので、最短距離でここまできたとは思ってないですね。

――早い段階からキャリアや将来像について明確なビジョンをお持ちではなかったということですか?
そうですね。たとえば、大学では情報コミュニケーション学部に所属していましたが、「情報」や「コミュニケーション」について学びたいという強い意志があったというより、たまたま流れに身を任せてそうなっただけです。

はじめに明確なキャリアプランがあったわけではなく、やりたいことに向き合う過程でスキルを身につける必要性に迫られ、素直に取り組んできただけというのが正直なところです。ただ、それぞれの局面では、全力で取り組むよう心がけてきました。

――そのほか、印象に残っている学生時代の出来事はありますか?
縁あってラオスに教育支援をしている学生団体に入りました。日本で実施したイベントの収益金で海外に学校や体育館などを建てるような学生団体です。実際にラオスに赴き、現地の子供たちと運動会をしたり遊んだりしました。とても貴重な体験ができたと思います。

とくに印象に残っているのが、現地の生徒さんとの会話です。ラオスのなかでも田舎のほうの小学校に行って生徒さんに将来の夢を聞いたとき、返ってきた答えが「教師」か「ない」のどちらかしかなかったんです。もちろん個人差はあると思うのですが、二択しかないことに驚きました。一般的な畑仕事をしている人よりはお金が稼げて尊敬もされる職業というと、教師以外にあまり思いつかないようだったんです。

将来の夢の選択肢が極端に限られている、そんな子供たちの状況をラオスで目の当たりにしたことで、あらゆる選択肢を持つことができ、その気になればいくらでもチャレンジできる環境にいる自分がいかに恵まれているかを痛感しました。目的もなくだらだらアルバイトして遊んでいるだけではなく、何かしらの価値を提供できる人間にならなきゃなと考えるようになったわけです。ラオスでのことは大学生時代のなかで人生を変えるくらいの素晴らしい体験だったと思います。

多くの人が“シンクロ”できる世界に。コミュニティにフォーカスしたサービスの必要性を痛感

STELLA代表取締役福吉 真之さん
――ラオスでの経験はその後の人生にどのような影響を与えましたか?
一番大きいのは、何でもよいから動いてみようと考えるきっかけをもらったことです。具体的に言うと、大学3年生のときに友人らと一緒にWebサービスを作り始めたことだと思います。

当時、リアルで届けることができる範囲よりもたくさんの人たちに対して、何かしらの価値を提供できるサービスを作りたいと考え、課題のタネとなるようなものを探していたのですが、自分の身近で、楽しんでいる人と楽しんでいない人の差が明確に出てきていて…。その違いはサークルや学生団体のように楽しめるコミュニティを持っているかどうかにあると思うようになりました。僕は運よく素晴らしい団体に入ることができましたが、そうでなければ楽しくない学生生活になっていたかもしれません。

サークルや学生団体を選ぶときの根本的な問題は何だろうと考えた結果、自分含め、学生たちのあいだの情報格差、情報の非対称性に問題があると思い至りました。とくに入学して間もないサークルや学生団体を選ぶ新入生に顕著で、どのサークルや学生団体を選んでよいかわからない学生が少なくありません。そこで、自分に合ったサークルや学生団体を簡単に探せるサービスがあればと思い、「UNION」というサービスをリリースしました。

また、当時の僕は身近にいる学生しか見えていませんでしたが、ある方から「日本にはまだ課題がたくさんあるから。自分とは違う環境で育ってきた人達に会って視野を広げたら?」と助言され、勧められるまま養護施設やNPO(非営利団体)に足を運ぶようになりました。

そこには裕福な家庭に生まれながらも学校に馴染めなかった子や、家に帰っても食べるものがなく、そこで提供される食事に頼って生きるしかない子など、さまざまな子供たちが通っていました。彼ら彼女らと話をしたり、一緒に時間を過ごしたりするうちに、その場所で楽しそうにしている子とそうでない子の違いは、自分にとって心を許せる人がいるかどうかだと思うようになったんです。

そんな状況を聞いて、見て、知って、お金はもちろんものすごく大事だと思っているのですが、それと同じくらいに「人間が幸せに生きていくためには、自分自身が心を許せるコミュニティ、心の拠り所が必要だ」と考えるようになりました。コミュニティにフォーカスしたサービスの必要性を痛感し、進むべき方向性がようやく定まったのがこのときです。それ以後は思いがブレることはなく、現在手がける趣味特化型SNS「シンクロ」の開発につながっています。

――その後、いろいろなインターンに参加されたのはなぜですか?
僕にとってインターンは、業界や職種について理解を深めるためのものではなく、当時直面していた課題を解決することを目的とした就業体験でした。たとえば、自分でプロダクトを作れたほうがよいよねということでプログラミングを学んで、プログラミングを教えるメンター(先生)のインターンをやったり、自分でサービスを作ったりしていました。ある企業では、インターンの立場でしたがやりがいを感じて採用内定者ばりに働いたこともありました。

インターンの仕事では、納得がいかないことを社員の方にその場でぶつけると、きちんと受け止めてもらえます。企業側が、目的意識を持った学生を受け入れる環境を用意してくださっていたので、居心地がとてもよかったことを覚えています。

直面する課題が原動力。実直に取り組んだ結果が今につながっている

STELLA代表取締役福吉 真之さん
――居心地がよいと感じた企業に属さずに自分で事業を立ち上げようと思ったのはどうしてですか?
そもそも、サービスを作っていた当時はビジネスとしてやって行くつもりはそんなにありませんでした。「どうすればサービスをたくさんの方に使ってもらえるか」がもっぱらの関心事で、同様のサービスを運営している人に直接会いに行って教えを乞い、考えながら実行してきた結果が今です。

僕は自分自身で課題と認識しているものを見過ごすのがきらいなたちなので、問題があれば取り組みたくなります。ビジネスチャンスを探し出してサービスを始めたというより、目の前にある課題に必死に取り組むうちに、気がつくと事業として形になっていたというのが正直なところです。

――アルバイトやインターンを通じて、スキル面以外での気づきや学びはありましたか?
社内政治にエネルギーを使いたくない、不毛なもめごとが極力排された場所で働きたいという考えが強くなりました。改めて振り返ると、起業の動機の一つに、会社を立ち上げて一緒に働くチームやメンバーをある程度は自分で選べるようになりたいという気持ちがあったと思います。すごくお世話になった方がたくさんいるのですが、やはりまったく性格が合わない方などもいたので。アルバイトやインターンを経験するにつれて、どんな人とどんな時間を過ごすかを大切にするようになった、と言い換えられるかもしれません。

STELLA代表取締役福吉 真之さん
――やりたいことが見つからない方にアドバイスをいただけますか?
ネット上などでもいろんな助言が飛び交っていますが、正解はないと思います。「やりたいことを無理に見つける必要はない」というのが個人的な意見です。そもそもやりたいことなんて簡単に見つかることではないので。とはいえ、まずは何でもよいので機会があれば積極的に取り組んでみるのは大事なことなんじゃないかと思っています。そこでやりたいことが見つかるかもしれませんし。ただ、やりたいことを見つけることが目的になると、すぐに「自分がやりたいのはこれじゃないな」となってしまう可能性があります。どんなことでもやり切ってみることが大切なのではないかと思います。

もし考えすぎてなかなか行動に移せないのであれば、考えが先行して動けなくなるタイプだとまず受け入れることから始める必要があるかもしれないですね。その後、チャレンジする機会があれば、やはり飛び込んでやり切るのがよいかなと。

僕も以前、いろいろ考えすぎて身動きが取れなくなって、頭を丸刈りにしてリセットする必要に迫られるほど迷走した時期がありましたから(笑)。偉そうに言うつもりはなく、過去を振り返ってみても、何かしようともがく苦しさは理解できるほうだと思うので。今まで自分の体験してきたことを振り返ると、とにかくどこかに飛び込んでやりきるのはすごくよかったと思います。

ちなみに、やりたいことが見つかった後は、尊敬できる大学、社会人の先輩に「こんなことをしたいんです」と相談を持ちかけ、助言をいただけたのはよかったですね。そのおかげで今があると実感していますし、いつか僕も誰かの力になれるような日が来るとよいなと思っています。

さいごに

たくさんの人にとって本当の意味で心の拠り所となるようなコミュニティを育てたいと話す福吉さん。言葉の端々に、社会に向けられたやさしい眼差しを感じられたのが印象的でした。企業家としてだけでなく、篤志家としても魅力的な彼が、どんなアイデアでどんな世界を実現してくれるのか、楽しみでなりません。

(取材・文・撮影:鈴木 一禾)

プロフィール
福吉 真之(フクヨシ マサユキ)
株式会社「STELLA」代表。大学在学中から数々のインターンに参加し、2019年に同社を設立。「心の拠り所が生まれるプラットフォームを作る」というビジョンのもと、インターネット上で交流・コミュニティが育まれる場の構築を目指し、趣味特化型SNSの運用を手がける。
Facebook:https://ja-jp.facebook.com/masayuki.fukuyoshi
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