さまざまな歌い手とコラボしたカバー動画が話題を呼んでいる音楽クリエイター・コバソロさん。YouTubeチャンネルは総再生数4億回、登録者数は100万人を突破。2017年にはチャンネル出演者のメジャーデビューも実現し、注目を集めています。
今回はコバソロさんに、「夢に向かって踏み出すために大切なこと」を伺いました。
あなたのことが好きだなんて言えないんです。feat 杏沙子/コバソロ
サッカー選手の夢が破れ、音楽の道へ
――音楽の仕事がしたいと思ったきっかけを教えてください。
元々はサッカー選手になりたかったんです。選抜メンバーに入ったりすることもあって、高校1年生くらいまでは日本代表になれると思ってたんですよ。だけど、だんだんと上には上がいるという現実が見えてくるじゃないですか。そこでひとつ、夢が破れて。
高校3年生のころ、クラスの友達に「文化祭で一緒に歌わないか」と誘われまして。中学時代から兄のギターを触ってはいたので、GACKTさんの「Last Song」を弾き語りで歌ったところ、すごく好評だったんです。それが非常に……気持ちよくてですね(笑)。ちょうど進路を迷っていた時期に、急に「音楽」というものが自分の選択肢に表れたんです。そこから「よし、音楽の専門学校行こう!」と決めました。
――音楽の世界に飛び込むことに、迷いや不安はなかったのでしょうか。
サッカーに対してもそうだったんですが、常にひとつの目標に向かっている自分でありたいと思っているんです。だから、何をやろうか迷ってる状態が好きじゃなくて。音楽というひとつの目標が見つかり、「これで食べていくんだ」と覚悟を決めて進むことにしましたね。
デュオ結成後、東京へ進出――なかなか思うようにいかず、活動も休止に
――自分の中で覚悟をもって決めた道だったのですね。専門学校では、どのような音楽をされていたのですか。
専門学校では「リトルタートルズ」というデュオユニットを結成し、大阪で活動していました。ありがたいことに、卒業後はインディーズの事務所に所属して東京進出も決まっていて、とんとん拍子に話が進んでいたんです。でも、いざ東京でやってみると、だいぶ保証のない世界というか、現実を突きつけられた感じはありましたね。事務所に所属しているからといって固定給じゃないですし、仕事は会社が用意してくれたライブに月に一回出て、2~3人のお客さんを前に歌うだけ。「これを続けていても、確実に有名にはなれない」と思いました。
そこで路上ライブを始めるようになり、手応えはあったんですけど、そこから先が広がらない。CDも手売りで1万枚くらいは売れたのですが、目標にしていたメジャーのステージまでなかなか繋がらない。そんな中、メインボーカルである相方の喉の不調によって、活動を休止することになりました。もともと彼の身体が弱かった部分もあって、実は路上ライブもソロとして活動する機会が多かったんです。活動休止は覚悟していたことではありましたね。
目標を達成するには、細かく目標を立てて走り続けること
――活動休止からYouTubeをはじめるようになったきっかけは?
休止後の1年間は「自分ひとりでもできないか」、とリトルタートルズへの挑戦のような気持ちもあって、ソロで活動していたものの、「ひとりだとしんどいし、さみしい」と感じていましたね。その気持ちもあって、現在のようなYouTubeでのコラボ動画をイメージするようになりました。自分ひとりでやるよりも、僕と関わった人がいい方向に向かえるような活動がしたいと思ったんです。
【女性が歌う】Lemon/米津玄師(Full Covered by コバソロ & 春茶)
――以前から誰かをサポートするような役割がしたいと考えていたのでしょうか。
専門学校で相方に出会ったことが大きいですね。彼は天才肌というか、歌声も作曲も、「なるほど、これが才能か」と感じていて。そこで、自然と僕はサポートする立場にまわっていました。だから、デュオとして活動したときには、「誰かを支えられる人でありたい」という思いはすでにありました。ただ、コラボ動画に関しては、いきなり無名の状態で「一緒にやりましょう!」と言っても「誰やお前」となってしまうので(笑)。まずはYouTubeのチャンネル登録者数を20万人まで増やして、地道に実績をつくるようにしました。
――途中でくじけずに目標を達成するための秘訣はなんでしょうか。
大きな目標をもつのではなく、目標を細かく立てることが大事だと思います。そうじゃないと、続かないんじゃないでしょうか。やっぱり、走り続けるのってすごく大変です。マラソン選手も、最初から「42.195㎞を○時間で走ろう!」と決めているのではなくて、「この地点までは何分で走ろう」みたいな細かい目標を立ててると思うんですよ。大きな目標も大切ですが、ゴールに至るまでのプロセスを分割することが続けられるポイントだと思いますね。
迷いながらでもいいから、「とりあえず」やってみることが重要
――夢に向かって一歩踏み出そうとしている読者に向けて、アドバイスをお願いします。
一歩踏み出すというのは、やっぱり大変な作業なんですよね。ただ、必ず“やらざるを得ない”ときは来るので、そのタイミングを逃さないようにしてみてはどうでしょうか。僕でいえば、進路を決めざるを得ない高3のタイミングで、ふっと湧いてきた音楽という道を信じて進んだことが転機でしたね。
最初の一歩は軽くていいと思うんですよ。迷いながらでも「とりあえずやってみる」というのは、けっこう大事なことです。僕も仕事のやる気が出ないときは、「とりあえず」、座る。「とりあえず」、パソコンつける。「とりあえず」、鍵盤打ってみる。そうやって、ひとつずつ「とりあえず」やってみることを重ねて行動することが多々あるので(笑)。「さあ、やるぞ!」みたいに、覚悟決めてできることなんて少ないですよ。だから、「とりあえず」、やってみる。やり始めたら、止まらないものです。そうなると、もう引き返せないはず。やり出したら、やらざるを得ないはずなんですよね。
プロデューサー、シンガーソングライター、映像クリエーターと多岐にわたり活躍中。作詞作曲編曲、演奏、デザイン、動画制作等 を自身でこなすマルチクリエイター。現在は、その圧倒的音域の唯一無二の歌声と類い稀なプロデュース力で、メジャーアーティストへの楽曲提供など精力的に活動中。
文:佐野智紀 撮影:安井信介