自分の中に迷いや不安が生じたとき、頭に浮かぶ言葉や励ましのメッセージなどがある人も少なくないのでは。何気ない一言が自分を救ってくれることってありますよね。
娘さんに伝えたい「人生で大事なこと」をまとめた『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』(産業編集センター)の著者である野々村友紀子さんに、社会に出てから自分の力で生き抜いていけるように――読者の大学生のみなさんにむけて、「伝えたい4つのこと」を教えていただきました。
1:「安い」と「楽」に飛びつくな!
安いもの、楽なものには飛びつく前に「理由」を考えろ。
なぜ安いのか? なぜ楽なのか? 必ず理由がある。
命に関わるものもある。時間を無駄にしたり、お金を捨てることになったり結果、高い代償を払うこともある。
本当に安全かどうか、自分のためになるかどうか。
飛びつく前によく調べて考えろ。
2:電車ではしゃぎすぎるな!
はしゃげばはしゃぐほど、「じゃーね、バイバーイ」、と友だちが降りて行って自分一人になった瞬間の真顔戻りはきつい。周りもその瞬間を見ているぞ。
学生ノリで自分たちだけ楽しむのもいいが、意外と周りは真顔ということ。
学生期間は楽しいが、周囲の時間は驚くほど冷静に同時に進んでいるということを常に忘れるな。
3:バスボムはすぐ使え
いただき物のバスボムを「特別な日に使おう」としまっておいたら、いつの間にか使用期限が切れていた。
そんなことにならないように、バスボムはもらったらすぐ使え。もらったときがタイミング。
物も気持ちも大事にしすぎないことが大事。
4:迷った時は、前と後ろを確認しろ
人生で迷った時は、まず前を向き、自分がこれからやりたいこと、なりたい自分を見る。そして振り返り、自分がこれまでやってきたこと、積み上げてきたものを確認。それから、今自分が立っている位置を見てみよう。
前と後ろの直線から大きくズレていないか?
グラついていないか? 立っているのが辛い位置じゃないか?
気づけば修正したらいい。
「大学生に伝えたい言葉」の裏側
以上、4つのメッセージの中にはドキッとしたものもあったのでは。その言葉の背景には、一体どのような思いが込められているのでしょうか。ご自身の当時のお話を含め、改めて野々村さんに伺いました。
――野々村さん自身、20歳ぐらいころはどのような日々を過ごされていましたか?
野々村:そのころは、芸人として舞台に立っていました。ただ、大学へ進んだ友人たちより先に社会へ出た身として、「みんなが大学卒業するまでに、自分は芸人として形になっていないと、人生で後れをとってしまう」、と焦りを感じていたんです。だからこそ、ストイックに頑張っていた時期でした。
――ストイックに努力を続けられた秘訣は?
野々村:大変なときやイヤなことも含めて「楽しい」と感じられていたからでしょうか。そう思えたのも、自分が本当にやりたいことだったからだと思います。ただ、しんどい思いが続いたら人生が楽しくなくなると思ったので、「本当に苦しくなったときは逃げよう」、と自分を許す考えも持ち合わせていましたね。
――今振り返って、当時の自分にかけたい言葉は?
野々村:「頑張ってくれて、ありがとう」です。芸人を引退し、今は放送作家として働いていますが、好きなことを仕事にして楽しく生きていられるのは、当時の頑張りがあったからだと思います。年齢を重ねたら好きなことだけしていたいし、できるだけ自分に甘くいたいじゃないですか(笑)。
そのためには、若いうちに頑張るべきなのかなと思いますね。美白と一緒で、努力も積み重ねが大事(笑)。若いうちの努力は、後で必ず実感できる日がきます。
――『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』は、娘さんへ伝えたい言葉を集めたエッセイとのことですが、これらの言葉はどのように生まれたのでしょうか?
野々村:例えば、パンツのタグを手でちぎって変な糸が出てきたときに「何事も丁寧にやらなあかんな」と思ったときにメモした「パンツのタグはむしるな」……なんてライトな内容も入っています。軽いものから真面目なものまで、自分の経験から感じたものを中心に生まれています。
――さまざまな経験から生まれた言葉だったのですね。
野々村:経験は心の身長を伸ばすものだと思っています。私は何事もとりあえず試してみるタイプで、車の免許を取ったばかりのときに「広島に行きたい!」と思ってそのままドライブしたり、あるときには読みたかったスティーブン・キングの本を5巻一気に読破したり。それは、「これができたんだから、次はあれもできるはず」、とさらに次のステップにもつながりました。
今の自分は、そんな小さな達成感と経験の積み重ねの上に立っていると感じているので、どんなに小さなことでも、経験して達成することの繰り返しで心の身長を伸ばせるんじゃないかなと思います。
――最後に、これから社会へ踏み出そうとしている大学生に向けてメッセージをお願いします。
野々村:人生を変えるのは出会いの積み重ねだと思います。ただ、出会ったときに、その相手が自分にとっていいチャンスをくれる人なのか、悪いチャンスをもたらす人なのかを見極めるのは、それまでの経験で培った“人を見る力”です。だから、大学生のうちにしかできない経験に、目から血が出るくらい(笑)いっぱいチャレンジしてください。その経験を通して出会いの数を増やし、人を見る力を養ってほしいと思います。
野々村友紀子
1974年8月5日生まれ。大阪府出身。お笑いコンビ「2丁拳銃」修士の嫁。芸人として活動後、放送作家へ転身。現在はバラエティ番組の企画構成に加え、吉本総合芸能学院(NSC)東京校の講師、アニメやゲームのシナリオ制作など多方面で活躍中。『強く生きていくために あなたに伝えたいこと』(産業編集センター)が初の著書。
文:千葉こころ イラスト:ますぶちみなこ