俳優・小野塚勇人さん(劇団EXILE)インタビュー 「一歩前進する勇気がたいせつ。僕も恥をかきながら前進していきたい」

小野塚勇人

大学の実習で蔵元を訪れた女子大生と、日本酒造りに懸ける人々のふれ合いを描いた映画「恋のしずく」で、老舗蔵元の息子・莞爾(かんじ)に扮した小野塚勇人さん。親子役を演じた故・大杉漣さんとの思い出や、20代半ばを迎えた今の仕事観について伺ってきました。

 

莞爾という役を自然体で演じることを意識しました

小野塚勇人

――試写を拝見させていただきましたが、日本酒づくりにかける皆さんの真摯な思いが伝わってくる、とても丁寧な作品でした。

派手さはありませんが、美しい街並みや伝統文化にかける人たちの思いなど、日本ならではの良さにあふれている作品です。何より登場人物の人柄や、人と人との関係性など全体的に温かい作品に仕上がったと思います。

――小野塚さんが演じた莞爾は日本酒の蔵元のひとり息子でありながら、別の道に進んでいるという設定でしたが、どんなことに注意して演じていたんですか?

蔵元の息子として生まれた環境や職人さんたちとの関係性、設定をきちんと自分に落とし込んで、あまり背伸びをしすぎず、等身大の自分で莞爾という役に近づけていこうということを意識しました。

――主人公の詩織を演じた川栄李奈さんとは初共演だったんですよね。

そうです。川栄さんってかなり人見知りなんですけど、会話を重ねていくうちに徐々に心を開いてもらえたんですよ。そうしたらめちゃくちゃ面白いし明るいし、切り替えるところはスパッと切り替える男らしさも持ち合わせてて、なんだか頼もしかったです。

 

大杉漣さんから教わった多くのものとは……

小野塚勇人

――そして、作品を語るに欠かせない存在が莞爾の父を演じた大杉漣さんで……。

大杉さんからは、俳優としての気構えや現場でのあり方などたくさんのことを教わりました。

――大杉さんとの思い出を聞かせてください。

実は大杉さんとは撮影中にほとんど会話を交わさなかったんです。それで僕は不安になって、杜氏役の小市慢太郎さんに相談したんですが、小市さんがおっしゃるには、この作品は親子関係がうまくいってないという設定だったので、撮影期間中だけは僕ともそういう関係性でいたいんじゃないかって。小市さんの助言で大杉さんの真意を知りました。そして、撮影が終わってからはとても優しく接していただきました。そんな大杉さんの姿を心から尊敬しましたし、名優といわれる人とはこういう人なんだと実感しました。

 

日本酒づくりにかける人たちの思いを受けとってほしい

小野塚勇人

――この「恋のしずく」には「一生忘れられないもの、みつけました。」というキャッチコピーがありますが、小野塚さんにとってのそういうものはもう見つかりましたか?

やはり大杉漣さんとの出会いです。一緒にお芝居できたことは、一生忘れられない出来事です。僕は、役者を始めてまだ長いキャリアはありませんが、お芝居をしていて鳥肌が立つような感覚を覚えたのは今回が初めてだったんです。なので、僕が大杉さんぐらいの年齢に達した時、大杉さんのように背中で語れる俳優になりたいというひとつの目標ができました。

――素敵な財産となりましたね。では、この作品で一番観てほしいのはどんな部分ですか?

フィクション作品ですが、酒蔵の皆さんが今おかれている状況を、舞台となった東広島市の西条で目の当たりにしましたし、多くのボランティアの皆さんのサポートがあって作品が成り立っているので、日本酒づくりに携わる皆さんの思い、西条の情緒、人柄などすべてを観てほしいです。

 

後輩が夢を叶える瞬間を目の当たりにし、意識が変わった

小野塚勇人

――ここからは仕事観を聞かせてください。小野塚さんはオーディションを経てこの世界に入られたんですよね。

現在、劇団EXILEのメンバーとして活動させていただいていますが、そこに至るまで3、4回オーディションに落ちているんです。オーディションを受けては落ちて、もうダメかな、これが最後と思って挑んだ時にやっと道が切り拓けました。今でも作品ごとにオーディションを受けていて、時には思いどおりにならなくて落ち込むこともありますが、その時の経験があるからヘンな落ち込み方はしなくなりましたね。でも、当時はかなりキツかったです。

――何度も落ちては再び挑戦してきた。その原動力となったものは?

僕はずっとサッカーをやっていて、高校はサッカーの名門校に入学したんですけど、訳あってサッカー部を辞めてしまったんです。当時、高校3年生ぐらいだったのかな。それが芸能界を目指すきっかけとなり、その後、何度もオーディションを受けたんですが、なかなか思いどおりにはいかずにくさってしまって。そんな時、後輩たちが全国高校サッカー選手権で優勝したんです。僕も彼らとは同じメニューをやっていたからどれだけ練習がきついかもわかっていたし、目の前で後輩たちが夢を叶えた瞬間を見て、くさってる場合じゃないな、もうひと頑張りしてみようって真剣に役者の夢と向き合うようになりました。

――悔しさがバネになったんですね。

アスリートの皆さんが口をそろえたように「諦めないことが大事」と言っていますが、まさにそのことを実感しました。

 

この先5年間を必死に頑張って、いい30代を迎えたい

小野塚勇人

――そうして迎えた今、20代のちょうどど真ん中にいますが、25歳ってどんな時期だととらえていますか?

一番難しい時期ですね。大人でもないし、20代に入りたての頃みたいに勢いがあるわけでもない。かといって、まったく勢いがないとも言えない……。オファーをいただいた役柄や、まわりの方の言葉を聞いて、今の自分はこんなふうに見られているんだと知ることもあるので、今は年齢を重ねていくことがすごく楽しみです。男は30代から魅力が出てくると思いますし、この5年頑張って、いい感じで30代にバトンタッチしたいです。

――「恋のしずく」では酒蔵の皆さんが幻の日本酒を完成させるために奮闘していましたが、同じように目標に向かって頑張っている若い世代へ伝えたいことはありますか?

僕もまだまだ夢を目指して走っている最中なので大それたことは言えませんが、まず目標に向かって一歩前進する勇気が必要だと思うんです。ただ、その一歩がなかなか踏み出せないんですが、1歩進んでしまえばあとはポンポンポンっと歩けると思うので、まずは勇気を出して一歩目を踏み出してほしいです。

――時には失敗することもあるかもしれませんが、それも経験ですからね。

そうですね。僕も現場で叱られては恥をかいたりなど何度も経験してますし、その時はムカついたり、落ち込んだりもしますけど、そこを超えてしまえば自分は強くなったんだという自覚も出てくる。その繰り返しで夢にどんどん近づいていくと思うので、恥をかいてなんぼ。僕も恥をかきながら前進していきたいです。

 

■プロフィール
小野塚勇人(おのづか はやと)

1993年6月29日、千葉県生まれ。2012年に舞台「あたっく№1」出演を経て、劇団EXILEの正式メンバーとなる。主な出演作に「HiGH&LOW」シリーズ、ドラマ「碧の海~LONG SUMER~」や「朝が来る」、「仮面ライダーエグゼイド」、舞台「野球~飛行機雲のホームラン HOMERUN OF CONTRAIL~」など。

◆OFFICIAL SITE:https://www.ldh.co.jp/management/onozuka/
◆OFFICIAL Twitter:@Hayato_onozuka

編集:ぽっくんワールド企画
撮影:河井彩美
取材・文:荒垣信子

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