【憧れシゴト図鑑】 映画『3月のライオン』、ドラマ『名刺ゲーム』ほか話題作の物語を組み立てる脚本家・渡部亮平さんインタビュー

脚本家 渡部亮平 インタビュー 3月のライオン セーラーゾンビ 東京センチメンタル 名刺ゲーム フロムエーしよ!!

映画『3月のライオン』、ドラマ『セーラーゾンビ』『東京センチメンタル』、最近ではWOWOWドラマ『名刺ゲーム』のエンドロールで名前を目にする脚本家の渡部亮平さん。作品の出来不出来を左右する重責を担う仕事ながら、数多くの人気作や話題作を手がけてきた彼は、デビューから7年、今ではオファーが絶えない。そんな渡部さんの成功への道のりとは――。

就活での失敗をバネに。TSUTAYAでバイトしながらシナリオスクールに通った日々

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――脚本家としてデビューするまでの渡部さんは順風満帆というわけではなかった。それは挫折からの始まりともいえる。

「学生時代からイベントなどを企画し、人を楽しませることが好きでした。だから“ドラマを作りたい”という思いが強まって、就活ではテレビ局を片っ端から受けたんです。でも、それが全滅で…。諦めきれなくて、大学を1年間休学して滋賀から東京に引っ越し、アルバイトをしながらシナリオ講座の養成学校に通ったんです。その時のバイトはTSUTAYA(笑)。それまでは映画マニアというわけでもなかったので、いろいろな作品を知る勉強になるかなと思いました。実際、多くの映画やドラマを観る機会が増えてよかったです。

シナリオ講座では、脚本家であり小説家でもある小林弘利先生に教えてもらいました。講座に通い始めて半年ほど経って、大伴昌司賞という脚本コンクールで佳作に入選したんですが、そのころテレビ局のプロデューサーさんと知り合って。翌年にはその人が担当する『アザミ嬢のララバイ』というドラマの脚本を1話だけ書かせていただくことになりました」

――就活の失敗を新たな夢へと繋いだ渡部さん。その1年後にはプロデビューを果たしのだが、ここで新たな暗雲が立ちふさがる。しかしそれがまた持ち前の闘争心に火をつけた。

「その後も、様々なコンクールに応募しては賞をいただいて。そのなかでも特にこだわったのが、『フジテレビ ヤングシナリオ大賞』。大賞を取れなくても上位に食い込めば、チャンスが広がる賞なんです。これに自信作を応募したんですが、結果は1次敗退。悔しかったし、当時はかなり落ち込みましたね。それで、“だったらその脚本で、自分で映画を撮ろう”と。それまでの賞金を元手に、スタッフはTwitterで募ったら、武蔵野美術大学の学生さんたちが手伝ってくれました。そこで出来上がったのが、『かしこい狗は、吠えずに笑う』という作品です。

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『ぴあフィルムフェスティバル』をはじめ、多くの映画賞を受賞。国内外のエンタメ関係者から高い評価を得ている。※TSUTAYA限定でレンタル中。

自主映画だったにもかかわらずいろんな人から反応をいただいて、特に犬童一心監督が“あれはいい映画”と拡散してくれて。それがきっかけで仕事の依頼もたくさんいただきましたし、何より、“ちゃんとした脚本を書けば、面白い作品に仕上がるんだ”という自信になりました。それまでは、プロデューサーの方と打ち合わせをしても、“これ、面白いの?”と聞かれて自信の無い返答しかできませんでしたが、映画を撮ってからは、“面白いです!”って、堂々と言えるようになりましたね」

『3月のライオン』では、原作を邪魔しないよう気を使って書きました

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映画『3月のライオン』。神木隆之介さん演じる高校生棋士が、さまざまな葛藤と周囲の人々とのふれあいのなかで成長していく物語。
©2017映画「3月のライオン」製作委員会

――映画制作以降、監督としての手腕も評価され、脚本のみならず、監督のオファーまであったという。そんななか、渡部さんの元に大作映画の仕事が舞い込んでくる。

「羽海野チカさんの人気コミック『3月のライオン』を映画化したいという話が業界内でよく話題になっていました。“自分とはまったく無関係な話”と思っていたんですが、以前から面識のあった『3月のライオン』のプロデューサーの方と偶然お会いする機会があって、それから数日後に“試しに脚本を書いてみてもらえないか?”と。“まさか僕が!?”って思いながらも、嬉しくて、1週間で前編の初稿を書き上げました。そこから正式にスタッフとして迎えられ、大友監督と打ち合わせしながら手直しをしていきました。監督からはいつも難しいオーダーで、打ち合わせの帰り道は悩まされていましたね(笑)」

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『3月のライオン[前編]』 発売元:アスミックエース/販売元:東宝

――脚本にはオリジナル作品と、『3月のライオン』のような原作の存在する作品がある。コミックスを実写映画化するにあたって、渡部さんは特に気を配るという。

「『3月のライオン』は、すでに原作コミックスに多くのファンがついています。だから“羽海野チカ先生の素晴らしい世界観を、あえて変えていく必要性はないだろう”“そこは求められていないのだろう”と思うんです。そういう意味では、『3月のライオン』は原作を邪魔しないよう、気を使って書きました。ただ、今回の映画化は、まだ原作には描かれていない部分もあって、その部分は羽海野先生からいただいたラフを元に脚本を書きました。僕が書いたシーンの1つについて、大友監督がDVD(オーディオコメンタリー)のなかで、“このシーンは思いのほかすごく良かった”って言ってくださって。その一言は本当に嬉しかったです」

学生時代こそ、いろいろな人に出会って世界を見て、見聞を広げるべき

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――失敗をしても諦めず、それを糧に夢を手に入れた渡部さんは、最後に、エンタテインメントな世界で働きたいと思っている人たちへ、こんなメッセージを贈る。

「僕は大学時代、1万円握り締めて1カ月間ヒッチハイクの旅をしたことがありました。そこで出会った人たちの話は面白くて、“世の中には面白い人がいて、面白い生き方をしている人がいるんだ”ということに気づきました。僕の書く脚本は、どこかで自分が見聞きし、経験したものからしか生まれてこないと思っていて、そういう意味では、ヒッチハイクや、大学3年の時に留学した韓国での体験などが、脚本制作に大きく影響していると思っています。だから学生時代には、できるだけいろいろ経験をして、いろいろな人の話を聞くのは大切だと思いますね。

あとは…、別に東京が一番素晴らしい街だとは思っていないんですが(笑)、地方に住んでいる人は、まず東京に出てくること。僕は自分に才能があるとか、力があるとか思っていなくて、ここまでこられたのは、周囲の人たちのおかげでしかないと。例えば小林先生や犬童監督だったり、“あの人と出会えていなかったら、今はない”という出会いがあったのは、やっぱり東京だからだと思うんですよね。エンタメ界で夢を実現させたいなら、その中心に身を置くことは夢への近道になる可能性はあると思います」

■プロフィール
渡部亮平(ワタナベ・リョウヘイ)

1987年8月10日生まれ、愛媛県出身。立命館大学休学中にシナリオ作家協会のシナリオ講座に学び、2010年『アザミ嬢のララバイ』で脚本家デビュー。多くのコンクールで入賞、グランプリを獲得する。現在はドラマや映画の脚本のほか、監督、演出、CM制作にも携わる。2018年1月にはドラマ『あったまるユートピア』(NHK BS-1)、秋には映画『ビブリア古書堂の事件手帖』、監督・脚本を務める『哀愁しんでれら(仮)』が公開予定。

Twitter:@RyoheiWatanabe

取材・文:佐藤豊治 撮影:八木虎造

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