一人暮らしだと寂しくて、家に友達を招いて遊んじゃうって大学生も多いのでは。しかし、それが犯罪者の付け入る隙になってしまっているかもしれないことをご存知でしたか。何かと物騒な世の中、危ない目にあわないためにも防犯対策を心がけてみましょう。今回は防犯アドバイザーの京師美佳さんに大学生でもできるお手軽防犯対策を聞いてきました。
家で友達とよく遊ぶ学生は要注意!?免許証・パスポートは30万円で売買
――犯罪について危機意識が薄い人もいると思いますが、一人暮らしの大学生だから起きやすいトラブル等はありますでしょうか?
強盗だけでなく、ストーカーなどのわいせつ目的の犯人も多くいるので、女子学生の一人暮らしは狙われやすいです。これまで実家に住んでいた女子学生は、戸締まりも親御さんがしてくれていたので、鍵をしないで学校に行ったり、夜寝るときにも窓を開けたままにしたりと不用心な人も結構多いです。
あと男女にかかわらず、友達をたくさん呼ぶこともあると思います。防犯的に言うと、誰かに見られるのを犯罪者は嫌うので、近所の人の目というのはとても有効です。
しかし、色んな友達が出入りすることで、近隣の人からすると友達なのか不審者なのかの区別がつきにくくなります。ウロウロしていたり、鍵を開けて入っていたりしても近所の人では見分けられないので、狙われやすくなってしまう可能性があります。一人暮らしで寂しいとは思うんですが、そういったリスクは考えてもいいかもしれません。
――男子大学生が被害に遭いやすいケースもあったりするのでしょうか?
男子学生で、高額なブランド品や装飾品などを持っているという人は比較的少ないので、取られるものはないと気を抜きがちなのですが、実は免許証やパスポートは一通30万円ほどで売買されるので注意が必要です。
海外から入国したい犯人が、写真だけ変えれば使用できてしまうので、窃盗団からするとお宝なんですよ。泥棒によって狙いが様々ですので、100%ターゲットにならない人はいません。盗られるものがないと思って、戸締まりをしていない人は気をつけましょう。
点検業者は本物か確かめる。簡単にできる防犯の知恵
――最近の犯罪で、大学生が気をつけた方がいいものは何が挙げられますか?
ここ数年、点検の業者や役所の人間を装う「なりすまし泥棒」が増えているので注意してほしいです。「火災報知器の点検にきた」等と言って部屋の中に入り、盗聴器をつけたり、部屋の下調べをしたりするんです。本当に点検したように帰っていくため、本人は気づきません。そして後日泥棒に入られた後になっても、なんで入られたのかわからないことがほとんどなんです。
点検が来た場合は、点検の知らせが回覧板などで告知されていたかを振り返る、分からないなら住居の管理会社に問い合わせてみる、名刺をもらって会社宛に電話をかけてみるなど、しっかり確かめることで対策はできます。正体が分かるまでロックは解除せず部屋に上げないようにしましょう。
――他に日常生活のなかで気を付けるべきポイントはありますか?
まだまだたくさんあるのですが、男性も女性も一人暮らしだと悟られないことが大事です。
単純な理由ですが、一人暮らしだと思われると、強盗やストーカーに狙われやすくなります。表札に自分の名前だけでなく家族の名前を書くとか、女性なら男性の名前も書くとか。複数人いると勘違いさせるだけで、犯人のターゲットからは外されやすくなります。
あと女性は、見知らぬ人が訪ねて来た際に、ドアロックをかけた状態でドアを開けて応対するという人も多いかと思います。その時に、ドアの隙間の見える位置に男物の靴をおいておくのも有効です。わいせつ目的の犯人は、男性がいると感じたら近づかなくなるケースが多いので、そのような小さな細工をしてみるのもいいでしょう。
100円ショップに行くことから始める防犯対策
――お金をあまりかけずに始められる防犯対策はありますか?
防犯カメラなど高価なセキュリティグッズは難しいという学生が多いと思いますが、100円〜200円で出来ることなら始めやすいのではないでしょうか。窓から侵入されることが多いので、補助錠をつけるといいです。ホームセンターでも100~200円くらいで買えて、100円ショップでも売っているところがほとんどです。ワンルームの部屋なら窓が1〜2個だと思うので、全ての窓に付けても数百円でできます。
あとは『セキュリティ稼働中』や『防犯カメラ設置』の防犯シール。普通に見たら偽物だとわかるのですが、異常な心理状態の犯人からすると、「もしかしたら…」と警戒するんです。たとえ偽物だったとしても、これを買ってきた時点で防犯意識があることをアピールすることができます。わざわざシールを貼って警戒している家に入らなくても、貼られていない家にいこう、という防犯効果は意外に見込めます。
寄り道が防犯の近道!?真面目すぎより楽しんだもんが、まさに勝ち
性別を問わずに生真面目な学生ほど狙われると京師さんはおっしゃっていました。同じ時間に同じ道で帰るなど、同じ行動を毎日繰り返してしまうと、泥棒が計画を立てやすく、ターゲットにされやすくなり危険が増すのだとか。
極論ですが、適度に遊んでいるぐらいの子の方がいいのかもしれません。深夜に帰ってくるのが女子学生にとってご法度だというのは勿論ですが、今日はショッピングに、明日は映画に…と不規則な行動する学生の方がいろんな犯罪へのリスクを減らせるに傾向にあります。
真面目なことはいいことですが、真面目”すぎる”のは考えもの。人生はある程度エンジョイした方がいいってことかなと笑う京師さんでした。
京師美佳(きょうし みか)
学校卒業後百貨店のエレベーターガール、商社の営業職に就き、2001年3月錠前師資格取得。町の鍵屋さんではなく、トータル防犯アドバイザーを目指し、セキュリティ企業へ就職。法人営業部の責任者を務める中、2002年10月 防犯設備士取得。
その後は、防犯ガラスメーカーに勤め、セキュリティ事業部長、そして、防犯アドバイザーとして、防犯診断や電話での相談受付、セミナーなど、幅広く活動を行う。
2005年5月独立。京師美佳セキュア・アーキテクトを設立し、2009年11月には、一般社団法人全国住宅等防犯設備技術適正評価監視機構理事に就任し、現在も、講演、テレビ、新聞、雑誌など多方面で防犯の啓蒙活動を展開中。
(取材・執筆:田中一成、編集:ネイビープロジェクト)