17歳で大学へ飛び入学した現役千葉大生に聞く 「しゃべらないロボットが僕に教えてくれたこと」

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2016年、春。梶原勇希さんは、当時17歳だった高校二年生の終わりに、千葉大学の飛び入学制度を利用して、千葉大学へ進学しました。

梶原さんは、中学時代よりロボットの競技大会であるWROなどに出場。国内大会を勝ち抜いて世界大会へ出場したり、千葉大学が主催する数理科学コンクールで、もっとも優秀な成績を収めた学生へ贈られる「金欅(きんけやき)賞」を受賞したりするなど、物理と数学の知識を生かして、さまざまな場で実績を挙げています。

しかし飛び入学を選んだ理由には、勉強を苦手としていた梶原さんならではの苦悩があり、その苦しみが、図らずも、自身の進路を切り開いていくのでした。

そんな梶原さんに、飛び入学をした理由や、好きなことを夢中になって取り組んだことで開けた進路の話などをお聞きしました。

 

高校生のときに選んだ“名誉の退学”

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Q:まずは、梶原さんが利用した飛び入学の制度のことを教えてください。

僕が利用した飛び入学の制度とは、千葉大の先進科学プログラム(以下、先進プログラム)です。

千葉大には、飛び入学という独自の制度、入学試験がありまして、その試験に合格すると、高校二年生から三年生にあがるタイミングで、千葉大の先進プログラムの一年生になれます。

僕は、高校を卒業していなくて、修了証書や卒業証書ももらっていないんです。高校には退学届を出しました。高校の先生とは、名誉の退学だって、冗談で話してたんですよ(笑)。

 
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Q:そこまでして、どうして一年早く大学で学ぶ進路を選んだのですか?

ここなら、好きなことだけをやっていけるかも、と思ったからでした。

僕が小学校4年生くらいの頃、街を歩いていると、自分と同じくらいの子どもが、教室のような場所でロボットを作って遊んでいたんです。

「楽しそうだな」って思ったことをハッキリと覚えています。子どもたちが遊んでいたのは、マインドストームといって、レゴブロックでロボットが作れる教材なんですが、これをきっかけに僕もその教室へ通うようになりました。以来、僕はロボット制作にどハマりするわけです。

「次はこんなロボットを作りたい」
「あんなふうに動かしたい」
 

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写真は高校生のころの梶原さん。小学生から始めたロボット作りは、このころになると本格的なものになっていた。[写真提供元:梶原勇希]

市販のレゴブロックだけでロボットを作ることに物足りなさを感じるようになると、部品を自作するようになりました。そのくらいの段階になると少しずつ、プログラミングや電気回路などの専門知識が求められるんですね。僕は本を読むことで、その知識を自分で学びました。

高校生のときは、部品を発注してゼロから作る、金属のロボットも自作したんです。

こうして僕は、だんだんと数学や物理に強くなりました。自分の好きなロボットを作るために必要な知識だった、ということで、これは僕にとって“勉強”ではなく、趣味の延長のような感覚です。

 

飛び入学のきっかけは、中学生の頃の危機感

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Q:では、ロボット制作をするために、千葉大学へ飛び入学をされたわけですか?

いえいえ、そうではないんです。

好きな分野がある一方で、僕はいわゆる“勉強”がかなり苦手なんですよ(笑)。特に、暗記がまるでダメで、学校の中間や期末にあるテストのような、試験対策なども苦手です。

実際に、国語や社会の成績はよくなかったですね。結果的に得意になった数学や物理でさえも、“効率よくテストを乗り切るために公式を覚える”となると、急激に苦手意識に襲われます。

だから「ヤバイ、俺、国語や社会は全然ダメだ。これで大学受験したら、生き残れない」という危機感は中学生のころから、ものすごくあったんです。テスト勉強や試験対策を得意にしている友達が周りに多かったこともあって、“勉強”への自分の苦手意識はどんどん膨らみました。

そんな僕に転機が訪れます。

中学校に赴任してきたある先生との出会いです。僕が、高校三年生にならず、一年早く大学で学ぶ、という進路へ進むきっかけですね。

その先生は、教育の世界では、ちょっと名の通った教育者で、「梶原くんは絶対に先進プログラムへ行ったほうがいい」とアドバイスをしてくださったんです。

 

「勉強の苦手な自分にも得意なテスト問題がある」という希望

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Q:進路の決め手になったのは、どんなことでしたか?

感覚的なことなんですが、先進プログラムに呼ばれているような感覚に陥ったことが、決め手になりました。

飛び入学のことを調べると、先進プログラムへは、数学と物理だけの試験で入学できることをまず知ったわけです。

ちょうど「自分は数学と物理で生きていく人間なんだ」と思い始めていたときだったので、「先進プログラムなら進路を切り開けるんじゃないか」「苦手な“勉強”から解放されるんじゃないか」そう期待しました。

 
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調べていくと、先進プログラムが、高校生以下を対象とした、数理科学コンクールというコンテストを開催していることがわかり、そこで優秀な成績を収めると、飛び入学の試験に有利であるという情報もキャッチしたんです。

そこで数理科学コンクールの過去問題に挑戦してみました。やってみると、【ドラえもんの秘密道具である“タケコプター”が実現可能かどうかを決め、その理由を答えよ】など、出題される問題がとても面白くて、ワクワクしたんですよ(笑)。

さらに僕は、数理科学コンクールの過去問へ挑戦していく過程で、この手の問題を解くのが得意であることもわかってきました。

“勉強”の苦手な自分にも、得意な試験やテスト問題があるんだとわかって、なんとなく手招きをされているような、先進プログラムに呼ばれているような心地良さがあったんです。

そうした体験の積み重ねが、飛び入学を進路として選ぶ決め手になっていきました。

 
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思い返しても、当時の選択は正しかったですよ。おかげで、今の僕は好きな数学と物理だけを学ぶことができています。幸せですね(笑)。

高校三年生で学ぶはずの数学や物理のカリキュラムを大学一年生で学びながら、大学の講義も受けるような一年だったので、去年は想像以上に苦労もありましたが、それでも、僕にとって一年早く大学生になれたことは、すごく有意義でした。

やりたいと思ったことにアクセスしやすい環境にいて、これまで以上に好きなことへ時間を費やすこともできます。それでも、やりたいことが多すぎて、時間が足りないです(笑)。

 

学生時代の“好き”に無駄はない

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Q:最後に、進路に迷う学生へ、進路の切り開き方のアドバイスをお願いします。

僕は、自分が好きだと思って取り組む学生時代の体験に、無駄なことはないような気がしています。

大学では人工知能(AI)を扱う概念のフォーマットの研究に取り組んでいて、これは、高校生になるのと同時に取り組んだ、“授業のノートをきれいにとる方法”を発展させたテーマなんです。

AIやロボットとは直接の関係がないテーマで、勉強の苦手だった僕が、その苦手意識を少しでも克服することに役立つかなと思って取り組んだことでした。

“授業のノートをきれいにとる方法”自体は、規則を細かく決めすぎたせいで、実際にやるのが面倒くさくなって一ヶ月で辞めちゃったんですが(笑)、その当時の考え方が、いまのAIの研究テーマにつながっています。
 

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高校一年生になって取り組んだ、“授業のノートをきれいにとる方法”の規則表。[写真提供元:梶原勇希]

ロボットコンテストで世界大会へ出場したときの僕は、部長として部活仲間の3チームを監督するような立場でした。このときは、チームをまとめるためにドラッカーのマネジメントの本を読むことで、その分野を学びながらマネジメントを実践できました。

いまの僕は、自分が子どものころに生徒だったレゴブロックのロボット教室で、小学生を相手に講師のアルバイトをしているんですが、チームをまとめた当時に学んだことは、そのアルバイトへ生かされていると思います。

中学生の頃の自分は、今の自分をまったく想像できませんでしたが、いまやっていることのすべてが、過去にやっていた“好き”の進化であると考えると、わずかでも興味をもって自分から取り組んだ学生時代の“好き”って、いろいろなことへ発展するんじゃないかなって感じます。

 
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僕の場合は、好きなロボットと深くかかわることを通じて、ロボットから自分の進むべき道を教わったような気持ちです。

“好き”を続けたことで進路という進むべき道が見えたわけですが、それは裏を返すと、進路を探すための一つは、進路が見つかるまで“好き”を続けることなのかもしれないですね。

それがいつ、どんなタイミングで訪れるかは、わかりませんが、必ず役に立つ何かへなっていくように思います。

 

まとめ

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いかがだったでしょうか。好きなことに無駄はない、そう考えれば、役に立つかどうかを考えずに、やりたいことへ打ち込めるような気がしました。それを続けた結果が、今後の進路やアルバイト、さらには就活へつながると信じて!

 
取材、構成、文:verb
撮影:片桐 圭
取材撮影協力:千葉大学 西千葉キャンパス

【ご注意】記事内にある、飛び入学制度の内容や、飛び入学生として認められる条件等については、梶原さんが受験をした当時の内容であり、本人の実感や考えに基づいたものです。制度について知りたいかたは、ご自身の責任で、必ず、最新情報を確認するようにしてください。

千葉大学の飛び入学についてはコチラ
http://www.cfs.chiba-u.ac.jp/

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