こんにちは、ライターの千葉こころです。
前回『Youは母国でどんなバイトしてた? 各国のアルバイト事情を留学生に聞いてみた』で、イギリス、韓国、メキシコ出身の3名の留学生に母国のアルバイト事情をお聞きしたところ、交通費が出るのは高待遇だという意見や労働環境、仕事の背景に至るまで、国ごとにさまざまな違いがあって驚きの連続でした。
そこで、「きっとほかの国でも、その国ならではのアルバイト事情があるはず! もっと知りたい!」と、いてもたってもいられなくなり、今回は英会話教室で講師をされているみなさんに「母国のアルバイト事情」を聞いてみることにしました。
訪れたのは、「英会話バー&カフェ LanCul 下北沢店」。ネイティブスピーカーの先生が25名以上在籍しています。
今回協力してくれるのはこちらの4人。
Kalyn(カリン)さん(アルゼンチン)
Taher(タハー)さん(イギリス)
Miguel(ミゲル)さん(ブラジル)
Lex(レックス)さん(アメリカ)
みなさん、とってもかっこよくて立っているだけで絵になる! さっそく母国のアルバイト事情について、詳しく聞いてみることにしました。
母国でやっていたアルバイトは?
いくつも掛け持ちするのがカリフォルニア流!?
こころ:
母国ではどんなアルバイトをしていましたか?
タハーさん:
僕は13歳から牛乳配達のアルバイトをしていたよ。本当は働くのは違法の年齢だけど、当時は宅配牛乳を頼む家がたくさんあってメジャーだったんだ。学生になってからは、飲食店のウェイターとか、父親のビジネスの手伝いだね。
レックスさん:
私も飲食店は経験があるわ。ほかにも、モデルや映画のエキストラ、旅行関係の仕事、SNS運用に関するマーケティングなどを掛け持ちでやっていたよ。
ミゲルさん:
え! 一度に全部!?
レックスさん:
ええ。いろいろな経験をしたかほうがクリエイティブになれるし、生きてる実感があるもの。毎日同じ仕事をしていたら、脳が活性化しなくなってゾンビになっちゃう!(笑)
こころ:アメリカではそういう働き方が多いんですか?
レックスさん:
州によって違いはあるけれど、私のいたカリフォルニアはエンターテイナーが多いから、わりと一般的な働き方ではあるかな。あとは、海外旅行へ行くために長期の休みがとりやすいという理由で、正社員にならずにアルバイトを掛け持ちしている人も多いみたい。
アルゼンチンとブラジルではアルバイトという形態がマイナー?
カリンさん:
アルゼンチンでも、最近はまとまった期間に休めるような働き方をする若者が増えていて。クリスマスや夏休み限定の仕事をしてお金を貯めて、その後は休んで旅行に行くっていう生活をシーズンごとに繰り返すの。
こころ:日本でいう海の家や年賀状の仕分けのような、季節限定であるお仕事のイメージですか?
カリンさん:
そう。でも、自営業やフリーランスのような感覚でやっているね。アルゼンチンでは、そもそもアルバイトが主流じゃないから。アルバイトをしているのは、専門の仕事の稼ぎだけでは生活できない人がやっている程度。掛け持ちやパートタイムで働く人もほとんどいないかな。だから、私はデザイナーの仕事だけで、アルバイトはしていなかったの。
レックスさん:
アルバイトがマイナーだなんてびっくり! でも、カリフォルニアでもモデルや俳優業で生計を立てられない人たちは、アルバイトをしながら夢を追ってる。そのあたりはどこも同じなんだね。
ミゲルさん:
ブラジルでもアルバイトという雇用形態自体がほとんどないよ。サンパウロといった大都市に行けばあるけれど、見つけることは非常に難しい。やっているのも一部の大学生くらいだね。その代わり、インターンシップで働く学生は多い。僕も学生時代はインターンシップで建築関係の会社へ入っていたよ。
タハーさん:
そうなんだ。イギリスでは一般的で、学生から高齢者まで幅広い年代の人がバイトしているよ。若者はお小遣い稼ぎだけど、高齢者は余生を充実させるために働いている人がほとんどだね。
日本で経験したことのあるアルバイトは?
「英会話の需要が多い!」「出張費を負担してくれる!」 日本のココに驚き
こころ:日本に来てからは、どんなアルバイトをしましたか?
カリンさん:
英語だけでなくスペイン語の先生、バーテンダー、テレビの出演やツアーガイドなど、いろいろやったね。
レックスさん:
今、英会話講師の仕事だけでなくバーテンダーやモデルもしているよ。日本って英会話に興味を持っている人がたくさんいるよね。60代でも高いレッスン料を払ってプライベートレッスンを受けに来るの! うれしいことだけれど、アメリカでは考えられないことだからびっくりしちゃった(笑)。
タハーさん:
僕は英会話講師の仕事だけ。ここで働いている以外にも、幼稚園やプライベートでも教えてる。確かに、英語の需要は多いよね。
ミゲルさん:
僕もほかのところで英会話講師のアシスタントをしているのだけど、出張したときに旅費や宿泊費をすべて負担してくれるのには驚いた! 報酬の何倍もお金がかかるのに、払ってくれるのは不思議。でも、僕はフリートラベルができて、すごくうれしい(笑)。アイ・ラブ・ユーだよ(笑)。
「終わりの時間はお金が発生しないなんて!」 日本のココがおかしい!
こころ:働きながら日本各地の観光ができるのはいいですね。ほかにも驚いたことはありますか?
カリンさん:日本は時間に関して思うところがあるわ。始業時間に2~3分遅れたら、その時間はお金がもらえなかったことがあって。だから、「終わりの時間より2~3分長く働いたら、その分はちゃんとお金をくれるの?」って聞いたら、それはないって。遅れると削るのに時間がオーバーしたらお金が発生しないなんて!
レックスさん:
始まりは厳しいのに、終わりの時間は緩いよね。私なんて1分前に着いていたのに「日本では10分前が当たり前」って言われたよ。信じられない!
タハーさん:
いやいや、イギリスは日本よりも時間に厳しいよ。場合によっては解雇されることもある。
カリンさん・レックスさん:
2分でも!?
タハーさん:
もちろん。それが仕事への責任だろう?
レックスさん:
そんなに厳しくする必要あるの?
カリンさん:もし9時からの仕事なら、私は9時15分くらいに行くわよ(笑)。それがラテンスタイルだもの。
タハーさん:
時間とお金に対するシビアな感覚があるから、日本やイギリスは経済的に潤っているんじゃない?
レックスさん:
いいえ、経済は関係ないよ。誕生日パーティやプライベートの待ち合わせだって、日本人は時間を守るけど、私たちは遅れるもの。仕事に関わらず、カルチャー的な問題だと思う。
カリンさん:ラテン系はゆったりした文化だから。仕事の時間を守るために家族との時間を犠牲にするくらいなら、私は家族との時間を大事にする方がいい。それが人生の豊かさにつながるでしょ。
こころ:仕事に対する捉え方も、国によってそれぞれなんですね。
カリンさん:
アルゼンチンも大企業なら働き詰めになりがちだけど、私はそうなりたくないからフリーランスとして講師をはじめいろいろな仕事をやっているよ。働くほど収入が増えるから、日本人のようにがむしゃらにやるときだってあるけどね。
こころ:家族を大切にしつつ、やるときはやるって感じですね。
カリンさん:
もちろん! 仕事のときは一生懸命働くけど、終わったら誰も仕事の話はしない。だって、そこからはプライベートの時間だから。みんな遊ぶのよ!
こころ:仕事とプライベートの切り替えがしっかりできているんですね。日本はうまく両立できない人が少なくないかも……。いろいろ勉強になりました。ありがとうございました!
まとめ
それぞれが自分の働き方に誇りを持ち、楽しんで仕事に取り組んでいる様子がとても印象的。アルバイト自体がない国や複数掛け持ちする人が多い国など、アルバイト事情はさまざまですが、“働く”ことは世界共通です。大切なのは、「自分はどんな働き方がしたいか」「何にウェイトを置きたいか」を明確にすることなのかな? と、気づかされた気がします。いろいろな国と比較してみると、日本のアルバイト事情が新鮮に感じられますね。
※この記事はフロムエーしよ!!に2017年2月28日に掲載されたものです。
取材協力:英会話バー&カフェ LanCul
http://lancul.com/
文:千葉こころ 撮影:runo kitabatake