スタジアムでビールを飲みながら野球を見るのが好きという人も多いのではないでしょうか。明るい声と笑顔で呼びかけてくる売り子さんからビールを買うのもスタジアム観戦の醍醐味の一つと言えるでしょう。そんな売り子さんも、出来高で給料が決まるシビアな仕事。他の人からではなく、自分から買ってもらうためにどのような工夫をしているのでしょうか。
今回お話を伺ったのは、「可愛すぎるビールの売り子さん」としてデビューし、タレントとして活動しているほのかさん。侍ジャパン壮行試合で結成された”売り子日本代表”のオフィシャルサポーターにも選ばれた彼女は、他の人が1日平均150杯売るなかで、平均300杯以上売っていたこともあると言います。今回は彼女に、売り子さんの仕事内容と、そこで培った接客術について聞いてきました。
人気者は時給1万円!?ビールの売り子さんはコスパがいい
まずは一般的な売り子さんの仕事についてまとめましょう。正しくは「立売スタッフ」という職業名で、プロ野球のシーズン中だけの季節限定のアルバイトです。約15kgのタンクを担ぎながら、シートの合間を移動してビールなどの飲み物を販売します。タンクが空になれば、バックヤードに戻ってタンクを交換します。高校生からできるアルバイトですが、かなりの体力仕事と言えるでしょう。
球場やメーカーによっても異なりますが、給与体系としては、基本給(出勤しただけでもらえる給料です)に歩合給(売った金額の○%や一杯○円と成果によって変わる)が上乗せされて支払われる仕組みです。加えて、さらに連続出勤・全試合皆勤などのボーナスや、販売した杯数や金額によってのインセンティブがつくところもあります。
一日の稼働時間は2〜3時間程度です。普通のアルバイトと比べると短いと思われるかもしれませんが、売り子さんは平均時給が2000〜3000円程度と言われており、割のいいアルバイトだと言えます。その中でも、ほのかさんのように各スタジアムにいる人気の売り子さんは倍以上の杯数を売り上げるので、給料も比例して高くなります。
販売エリアは固定 いかに常連さんに買ってもらうかが鍵
自由に動き回っているように見えて、売り子さんごとで販売エリアは固定されており、どのエリアに固定されるかで売り上げが大きく変わります。各スタジアムによって違いはありますが、
・バックヤードから距離があるフェンス前は杯数が稼げてもタンク交換の面で不利
・一塁側はホームチームのファンが中心で常連さんが多い
・三塁側はアウェイチームなので、常連さんが少なく、体力勝負になる
など状況はさまざまです。配置は、ルールやスタッフの指示に従わなければならないので運次第のところも大きいと言われています。ただ、エリアに関係なく売り上げを伸ばさなければなりません。そこで肝心なのは、「常連さんをいかにつけるか」です。
笑顔で大きな声を出すというのは基本と言うほのかさんに、他の人からではなく、自分から買ってもらう工夫を聞いてみました。
1)短い時間で覚えてもらう会話
接客業なのでコミュニケーション面での工夫は必須です。単に見た目がキレイ・可愛い人でも無愛想では常連さんがつきにくく、逆に容姿よりは愛想が良くて会話が上手い方が売れる傾向にあるそうです。
スタジアムに野球を観に来る人の多くは男性で、売り子さんにも積極的に話してくれます。「○○選手、調子いいね」や「ビール樽、重そうだね」などと試合の状況や売り子さんの様子を見て話しかけてくれるため、話を合わせて聞き手に回ることが中心です。ただ、ビールを注ぐ30秒程度の時間でできる会話にも限りがあるためスピードが命になります。言われたことには素早く反応して、一緒に試合を楽しみながら自分を印象づけられるかが売り上げを伸ばす鍵でしょう。ほのかさんは、自分を覚えてくれた常連さんには野球以外のことも徐々に話すことで距離を詰めていったと言います。
また女性のお客様には、よく観察してから話しかける側に回ります。例えば、ネイルがチームカラーであることに気づいたら、「ネイル可愛いですね!」と声をかけると、「そうなの!ここが少し時間かかってね」と女性ならではの切り口で話が広がり購買に繋がることもあると言います。
2)覚えやすい目印
目立って見つけてもらうことは大事ですが、常連さんをつけるというポイントで言うと「覚えやすさ」にも配慮が必要です。
帽子に花をつけたり、特徴的な腕時計をつけたりと各々が工夫する中で、ほのかさんの場合は、ポケットに入れて持ち歩くビールカップ16杯全部をわざとポケットから出して積み重ねて持つ、という工夫をしていました。それを手に持って自由の女神の松明のように掲げて歩いたと言います。ポケットに入れて歩いている売り子さんより、後ろの席の人からも見つけてもらいやすくなっただけでなく、特徴的なので自分を認識してくれるのに役立ったそうです。
さらに、ほのかさんは膝サポーターをつけていました。ビールを注ぐ時は片膝をつくので左の膝が汚れてしまいがちなのですが、膝サポーターをしたところ、「左足にサポーターしてる子!」と呼ばれることが増えたのです。偶然ではありますが、お客様は売り子さんの名前を知らないので、覚えやすく・呼びやすい目印をつけて他の人と差別化を測ることが重要なのです。
3)ひと工夫のファッション
支給される制服を着て営業をするのですが、同じものをみんなが身につけているからこそ工夫が必要になります。自分の個性に合わせたコーディネートをすることで、他の売り子さんと差別化ができ、お客様にも覚えてもらいやすくなるわけです。アイテム別で簡単にまとめてみましょう。
・キャップ:被り方で印象が変わります。逆さに被ってボーイッシュにしたり、浅くして頭に乗せてガーリーに見せたりと、演出方法は人それぞれです。
・スカート:支給されるものをそのまま着るだけではもったいない。何回か折って、ミニスカートにして履くことで、脚長効果など見た目を可愛くすることができます。
・ソックス:自由度が効かせられるアイテムのため、支給されるものはありますが、くるぶし丈のソックスで脚長効果を出したり、ニーハイソックスを履いて絶対領域を作ったり、ルーズソックスでたるませたりと個々人で持参しています。
・靴:可愛さも大事ですが、体力勝負の仕事のため機能性を重視します。普段履きのスニーカーは極力避け、軽くて動きやすいスポーツシューズがおすすめです。ほのかさんのおすすめはリーボックのシューズだとか。
4)ビールは美味しく提供
ビールを美味しく提供する努力も怠りません。移動中は背筋を伸ばすことで振動を減らし、タンクの中でビールが泡立つのを抑えます。注ぐときは液:泡が7:3になるように注意しながら注ぎます。半分ぐらいまではグラスを傾けながら注ぎ、半分以降はグラスを立てつつ、注ぎながらサーバーの蛇口で液をかき混ぜながら最後まで入れます。そうすることで、クリーミーな泡に仕上げる工夫をしているそうです。
楽しみながら汗をかく、部活動のようなアルバイト
体力勝負のアルバイトが故に、部活をしている感覚だったとほのかさんは楽しそうに語ってくださいました。1日の仕事が終わったあと、ビールが何杯売れたか、個人の売り上げが発表されるのですが、それを見て「うわ、負けたー!」と一喜一憂しながらも、優しいお客様や面倒見のいいスタッフに囲まれて楽しめる仕事です。みなさんも、ほのかさんのポイントを踏まえてビールの売り子さんにチャレンジしてみてはどうでしょうか。
(取材・執筆:田中一成、撮影・編集:田中利知[ネイビープロジェクト])
1996年3月23日生まれ。21歳の現役女子大学4年生。テレビタレントやモデルとして活動中。野球場で人気の売り子さんとして有名となり、「可愛すぎるビールの売り子さん」として2016年5月に芸能界デビュー。現在はファッションショーやバラエティ番組への出演を中心に、ドラマにも出演するなど活躍の場を広げている今注目の女性タレント。公式Twitter:https://twitter.com/s2jh3
公式Instagram:https://www.instagram.com/nononon159/
公式ブログ:https://lineblog.me/honoka/
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