BiS、BiSH……話題のアイドルを手がけるプロデューサー・渡辺淳之介さんに聞く「学生時代の失敗からの大逆転」

BiS、BiSH……話題のアイドルを手がけるプロデューサー・渡辺淳之介さんに聞く「学生時代の失敗からの大逆転」

「楽器を持たないパンクバンド」であるBiSHや「新生アイドル研究会」をコンセプトとするBiSなど、既存のアイドルの枠組みを飛び越えるようなアイドルを手がけるプロデューサー、渡辺淳之介さん。過激なMVやメンバーのレンタル移籍、合宿型オーディションの生中継など、奇想天外なプロモーション企画で数々の話題を呼んできました。そんな渡辺さんは、不登校による高校中退から早稲田大学現役合格を果たし、就活失敗から有名プロデューサーになるなど「失敗からの大逆転」を果たしています。あきらめずに夢を現実にした体験や「好きなことを仕事にする」ために必要なことを伺いました。

BiSH / My landscape

 

音楽に夢中になりすぎて失敗した学生時代

 
――渡辺さんは高校を中退した後、大学入学資格検定(現・高等学校卒業程度認定試験)を受けて、早稲田大学へ入学されたんですね。

そうですね。自由な学校だったので、馴染めなかったわけじゃないんですけど、遊ぶのに夢中になっちゃって。僕の場合、引きこもりじゃなくて「出ずっぱり」の不登校生で学校には行ってないけど、バンドやってたし、いろいろと悪さもしたし、「もう学校には来ないでくれ」ということになりまして(笑)。

でも、その頃から音楽業界には行きたかったので、「いい会社に就職するためには早稲田大学だ」と、赤本(過去問題集)を勉強して傾向と対策をしっかりやりました。たとえば英語だと、MARCHレベルなら文法や単語をしっかり覚えないと受からないんですけど、早稲田は長文読解問題がメインなので、毎年だいたい問題の傾向が似通ってるんですよ。だから僕、英語は満点近く取れましたからね。

――大学ではどんなふうに過ごしていたのですか?

がんばって大学に行ったはいいものの、そもそも学校が嫌いだったんですよね(笑)。だから、講義もほとんど受けなかったし、友人や後輩に助けてもらいながら、なんとか6年で卒業しました。当時培った「周りから助けてもらえる環境づくり」は、今でも仕事に役立ってます(笑)。

その頃から、アルバイトというよりはもうちょっと本格的に働くようになって、レコーディングスタジオに勤めるようになりました。結局そのまま音楽の世界に入ることになったんですけど、就活のときに一度失敗してるんですよね。

 

「ありのままの自分」で挑んだ就職活動で玉砕

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――就職活動での失敗、というと?

希望する企業に入れなかったんです。レコード会社やテレビ局、出版社、広告代理店などエンタメ・マスコミ系企業を受けました。テレビ局のインターンには受かり、ドラマ班に配属されて、当時の同期が20人くらいいたんですけど、結局僕だけ、どの大手企業にも引っかからなかった。

大学受験のときにはあれだけ「傾向と対策」をやったのに、なんで就活でもそれをやらなかったんだろうと思うんですけど、「音楽が好き」だからこそ、「ありのままの自分でいい」と思っちゃったんですよね。それが間違いだった(笑)。

「ちょっと尖ってた方がいいだろ」「好きなことをやればいいじゃん」と思ってたから、とあるレコード会社の面接で、自信満々で自分の企画をプレゼンしたんですよ。そうしたら「君は業界のことをわかってない」と説教されて。テレビ局の面接でも怒られたんです。「今はテレビ業界だけで完結しては、ビジネスが成り立たない。浅はかすぎる」って。二社から同じように怒られたから、「あ、俺が間違ってたんだな」って、さすがに思い知らされました。

やっぱり、エンタメ企業でもちゃんとした「大手企業」なんですよ。だから、別に「ヘンな人」はいらないんです。会社によってもカラーが違うし、そこをしっかり見極めたうえで、「嫌われない」っていうのが重要。僕がやってたことは結局、野球ファンと同じで、監督でもないのに「俺だったらここで代打出さねぇのに」ってブツブツ言ってるだけ。しょせん、外野は外野だったんです。

 

本当にやりたいことがあるなら、どんな環境でも腐らずに結果を残すこと

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――うまくいかない就職活動をどのように挽回しましたか?

新卒で希望の会社に入れないと、「マジでやばい、人生終わりだ」って思ってたんです。周りからは「音楽が好きなら、趣味でやればいいじゃん。別にどこでも就職できるんだから」って言われましたけどね。メガバンクや証券会社のリクルーターから電話かかってきて、一緒に高そうなメシ食って、「ウチも良い会社だよ」なんて言われるんですよ。でもやっぱり、音楽が好きだったし、「自分の名前がディレクターとしてクレジットされたCDを発売する」っていうのを、どうしてもやりたかった。それをやるまでは、終われないな、って思ったんです。

――それで大学卒業後、インディーズのレコード会社「つばさレコーズ」に就職されたんですね。

今でこそBiSや水曜日のカンパネラ、井上苑子などでちょっとサブカルな会社として知られるようになりましたけど、当時はシンガーソングライターの川嶋あいさんを筆頭に真面目なイメージが強くて。僕はパンクバンドが好きだったし、周りからも「ちょっとキャラ違うんじゃないの?」って思われてた。でもむしろ、つばさレコーズに入らなかったら、今の自分はなかったですね。かなり自由にさせてくれたんですよ。入社しばらくしてからBiSを手がけるようになって、僕も前に出ていって目立って、なんとかしてやろう、と必死でした。

――BiSは「アイドルらしからぬアイドル」で、プロモーションの手法も話題になりました。

今はもう、お茶の間の方にも見ていただく機会も増えたので、僕のやり方も臨機応変に、ちょっとずつシフトしてますけどね。同期で大手企業に入った連中を見ていると、下積みの期間が本当に長くて。それこそ、給料はめちゃくちゃ良いんですけど、実際にやってる仕事は「膨大なビデオテープの山から、『ドーハの悲劇(1993年に行われたサッカーW杯最終予選の日本対イラク戦)』の場面を見つける」みたいな。10年我慢して、やっと表に出るような仕事ができればいいほう。もし僕が新卒で大手に入ってたら、辞めてたかもしれません。

――大手の人が大勢いる企業でなく少数精鋭の会社で腐らずにがんばったからこそ、チャンスをつかめたんですね。

本当にやりたいことがあるんだったら、どこでもいいと思うんですよ。頭角を現せばいいので。希望通りの会社に入れたとしても、やりたい仕事に就けるとは限らない。「出版社入って編集しよう」と思ったら、営業に回されるとか。でも、その書店営業も大切なんですよ。僕もCDショップがなければCDを売れないから、バイヤーさんと話をしてくれる営業さんの存在が本当に大切ですし。全部「楽しい仕事だ」って思いこんだら、がんばれるじゃないですか。

 

やりたいことをやるためには相手を納得させる「材料」がいる

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――渡辺さんのように「好きなことを仕事にする」ためには何が必要なのでしょうか?

夢のない回答かもしれないけど、まずは「グッとこらえる」ことが必要だと思うんです。やっぱり、好きなことを認めてもらうには、時間がかかるんですよ。

たとえば、メジャーのレコード会社と契約するにしても、ある程度の知名度と動員がないと話にならない。会社の「上の人」を説得するには、「材料」がいるんです。学生はいわば、その材料を何も持ってない状態ですよ。少しずつ実績を積んで、信頼関係を築いていけば、やりたいことができるようになってくる。「わがままな奴」と思われたら、普通に良い企画でも通してもらえなくなりますからね、僕も痛い目に遭いましたけど(笑)。

組織の中では、相手の話してることを「そうなんですね」と一旦は受け入れるんです。そうすると、「あ、こいつちゃんと話を聞いてるんだな」と思ってくれる。「長いモノには巻かれろ」ですよ。

BiS、BiSH……話題のアイドルを手がけるプロデューサー・渡辺淳之介さんに聞く「学生時代の失敗からの大逆転」

でも、若いときに「こんなのクソだ」みたいに思ってたことでも、意外と意味のあることだったりするんです。「テレビの音楽番組なんて」と思ってたけど、自分の手がけたアーティストが出演すると、普通にうれしいですからね(笑)。もっと幅広い世代の人に「すごいね!」と思ってもらえるような企画を出していきたいな、という思いと……やっぱり「大人にはずっと反抗していきたい」みたいな反骨精神はありますね。僕も十分……たぶん「大人」なんですけど(笑)。

 

■プロフィール
渡辺淳之介(わたなべ じゅんのすけ)
1984年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、つばさレコーズに入社。2014年にWACKを設立し、代表取締役に就任。BiS、BiSH、GANG PARADE、EMPiREなどのプロデュースを担当するほか、ファッションデザイナーのNIGOとともにBILLIE IDLE®のプロデュースも手がける。
http://www.wack.jp
Twitter: @jxsxk

 
文:大矢幸世 撮影:安井信介

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