俳優、アーティスト 北村匠海さんインタビュー「仕事で出会った仲間が僕を変えてくれた」

北村匠海
ダンスロックバンドDISH//のヴォーカル兼、俳優として活躍中の北村匠海さん。映画やドラマ、CMなどで印象的な表情を残しています。小学生からこの世界に入った北村さんが「この仕事で生きていく」と決めたのは高校卒業のときだったそう。そのきっかけや、最新出演映画『勝手にふるえてろ』の話、そして仕事観などをうかがいました。

人と関わることをしない役に、どこか共感できた

北村匠海
――『勝手にふるえてろ』で北村さんは、ヒロインの片想い相手イチを演じていますが、なかなか嫌な性格の男性でしたね(笑)。

ですよね。最初、監督からも「イチは嫌なヤツです」と言われて、台本を読み終わった僕も「そう思います」と答えました(笑)。

――そんな誰もが認める“嫌なヤツ”をどう演じようと思いましたか?

イチの場合、人を攻撃するのではなく、他人への興味が著しく欠如していて、自分ひとりで生きていても平気というキャラクター。
人と関わることに対して「面倒くさい」という負の感情が普通の人より8割増しぐらいであるタイプ。だから、現場では他のキャストと極力距離をとるようにして、慣れ合わないよう気を付けました。
本当はDISH//のメンバーの(小林)龍二もいたので、撮影の合間は和気あいあいとした気持ちになりたかったのですが、イチという役をしっかり掴みたくて、冷たい空気をまといながら撮影に臨むことを心掛けていました。

でも、どこかでイチの気持ちも共感できるんです。僕自身も中学生まで心を閉ざしぎみだったので…。

――中学時代はどんな性格だったんですか?

とにかくしゃべらないし、ひとりが好きだった。話しかけられたら話すけど、積極的に人の輪に飛び込むこともあまりしなかったです。

音楽と出会って、殻に閉じこもっていたら何も伝えられないと気がついた

北村匠海
――今、お話ししていて、そんな感じはまったく見受けられませんが、どのあたりから変わったんでしょう。

音楽をやり始めてからですね。DISH//でヴォーカルを担当することになって、歌で人に何かを伝えるのは相当なエネルギーが必要だと知りました。
歌を歌う人が、自分の殻に閉じこもっていたら何も伝わらないと思い、少しずつ自分を変えていきました。

あとは、俳優仲間で信頼できる友達ができたことも大きかったです。
たとえば新田真剣佑、村上虹郎、健太郎など同世代の俳優と出会い影響を受けました。
この3人は僕と真逆の性格。だからこそ、自分の知らないものを見せてくれるし、考え方が刺激になる。
引っ張ってもらっているうちに、自分自身の幅やコミュニケーション能力もあがったと思います。

――自分と逆の性格だからこそ友達になるのって大事なんですね。確かに同じタイプといても広がりは少ないかもしれません。

ホントそう思います。だから、彼らに影響を受けて今ではあまりひとりでいることが好きじゃなくなりました。

9歳でスカウトされ「怒られたくない」の気持ちだけで仕事に取り組む日々

北村匠海
――それは大分、変わりましたね(笑)。北村さんはもともと小学生のときにスカウトでこの世界に入っているんですよね。

そうです。9歳でスカウトされましたから、芝居がやりたいとか音楽がやりたいとかまったくなく、むしろテレビの世界すらよく分からないまま入りました。
だから完全にゼロからのスタート。特に目標もないですし、当時は子どもだったので「監督に怒られるの嫌だな」とか「いろいろな人に何か言われるのは面倒だな」という気持ちだけで仕事をしていましたけど、年齢を重ねるにつれて考え方が変わってきました。

――どのように変わってきたのでしょう。

怒られるのが嫌で取り組んでいた芝居が年々、演じることが生きることの一部に思えるようになってきたんです。
小学生のころからセリフを言う気持ち良さは感じていたのですが、それがどんどん大きくなってきて、かつ、情熱がこもってきました。この仕事は不安定な部分もあると思いますが、それ以上に他の仕事では得られないことがたくさんあります。
例えば「1ヵ月で剣道のプロになって」というオーダーをこなさないといけないけれど、それが楽しい。
その結果、作品となって自分の目で見たときの達成感は何にも代えがたいですし。

それで、高校を卒業するときに「僕はこの世界で生きていく」と決断しました。
この頃から、自分のことだけでなく、監督の方やスタッフの方など、一緒に作品を作り上げていく方たちと話合いながら、自分がどう演じるべきかを考えるようにもなりました。共に仕事をしていくという概念が出てきたんです。
そうすると、また新しい楽しさも出てきて、年々、仕事がおもしろくなっているんですよ。

昔から憧れていたガソリンスタンドでアルバイトをしてみたい!

北村匠海
――ひとりで完結するのではなく、みんなと作り上げる「仕事」のおもしろさを感じはじめたのかもしれないですね。でも、北村さんの個人的な演技でいつも思うのは目線が印象的なところ。自分なりの演技のこだわりなんでしょうか。

演技をするうえで目の動きは一番大切にしています。目線って人となりがとても出ると思うんです。
相手を直視するのか、ちょっと見て目線を外すのか。その少しの動きでニュアンスがまったく変わるので。
特に映画のスクリーンでは目線や細部の動きは観ている方に印象を残せると思っています。そんな細かいことを考えて演じるのは、ひとつのこだわりかもしれません。

――最後にひとつ質問です。北村さんは9歳から仕事をしているのでアルバイト経験はないと思いますが、もしやるとしたらどんなアルバイトをしたいですか?

ガソリンスタンド!(即答)。僕、昔から車を題材にしたゲームや映像が好きでなんです。だから車に関われるアルバイトがしたいなと!

――車がお好きなんですね!

はい! 車が大好きなんです。幼いころから父親の運転する助手席に乗る度にワクワクしていました。自分が好きなことでアルバイトをしてみたいですね。

■Profile
北村匠海(きたむら・たくみ)
1997年11月3日生まれ。2008年映画『DIVE!!』で初出演。2013年ダンスロックバンド『DISH//』のメンバーとして活躍。2017年映画『君の膵臓をたべたい』で映画初主演。

取材・文:中屋麻依子 撮影:曽我美芽

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