脱サラDJ河合桂馬インタビュー。現在のスタンスとバイト遍歴から見えてきたもの

河合桂馬さん

アパレルショップ店員や大手総合商社の広報などを経験し、2015年にフリーランスのDJとなった河合桂馬さん。現在は海や山などのアウトドアフィールドを中心に、イベントの企画運営から演者までをこなすプレイングマネージャーとして活躍しています。湘南・茅ヶ崎に移り住み、自宅は海まで徒歩3分。都心を俯瞰で見ることで、「お金」「仕事」「時間」のバランスも考えるようになったそう。異色の経歴を持つ野外選曲家に、“働くとは何か”を伺いました。

 

人が100%踊り出す音楽は存在しない。だから面白い

河合桂馬さん

-大学に入学してDJを始めたそうですが、きっかけを教えてください。

大学に入って始めたアルバイトで、DJをやっている先輩に出会ったのがきっかけです。当時20歳だったのですが、彼らが生み出す華やかな世界に憧れを抱き、この業界で成功したいと感じるようになりました。

-ではその魅力は?

DJの魅力は一言でいうと“自由”だと思います。セットリストの無いライブ感が魅力です。僕はDJを始めた当初、1から10までリストを作って決めた曲を流していました。でも、それではオーディエンスの心は掴めません。自分がプレイするのは何番目なのか。客層は。時間帯は。これらを考慮して反応を見ながらアジャストしていくのです。

とはいえ、オーディエンスの反応に合わせていくだけではプロの仕事ではありません。DJの仕事は、イベントやパーティー会場を音楽でコントロールすることです。つまり、彼ら彼女らに新しい発見も提供していかなければならないのです。

オーディエンスが100%踊り出すトラックは存在しません。だからこそ観察して、時には攻めるというバランス感覚が必要です。そのアプローチの仕方は無限大。そんな自由なところが魅力に感じるのです。

 

企画から運営、海外進出も果たした野外選曲家

河合桂馬さん

-自由を求めて活躍の場は野外フェスにも広がりました。

大自然の開放感の中で、色んな楽しみ方ができるところに野外フェスの自由さがあります。野外フェスなら、好きなアーティストのライブを観るのも、キャンプを楽しむのも、音楽を聴きながら仲間と飲むのも自由です。人それぞれの楽しみ方があります。

-野外選曲家として、企画運営にも携わっています。

はい。以前主催したのはオートキャンプ場で実施した「バックパッカーズフェス」です。企画はもちろん、人がどこに留まるかなどを考えて、スタッフと協力して機材やテーブル、椅子などを運び会場のレイアウトも自ら行いました。

皆が満足するイベントを作り上げていくのは大変です。本当にお客さんが来てくれるのか、心配になる時もあります。それでも当日、お客さんが楽しんでいる笑顔を見ると、辛い肉体労働も忘れるほど嬉しくなります。これがイベント運営の醍醐味です。

-フリーランスDJとなって1年が経った頃、韓国のフェスにも参加したそうですね?

とても印象的でした。海外でプレイすること自体初めての経験。オーディエンスは当然、僕のことなど知らないのです。プレイ中、いつもと違う感覚がありました。何となくお客さんのテンションが振り切れていないのです。

いつもは僕がお客さんを見て選曲していくはずですが、この時は「この日本人はどんなプレイをするのか」と、逆に見られていたわけです。だったらそれを利用しようと。僕はDJブースの椅子の上に乗って大声で「We love KOREA!!」と叫びました。その瞬間、一気にフロアの空気感が変わりました。心を通わせたあの瞬間の盛り上がりは忘れられません。

 

DJまでの回り道が糧になるまでの回り道が糧になる

河合桂馬さん

-なぜ、大学を卒業してすぐにDJにならなかったのですか?

僕は大学受験に失敗して、1年間浪人しました。また大学1年生の時、取得単位が1で早速留年してしまったのです。親には予備校に通わせてもらって、5年分の学費も払ってもらっていたので、卒業して「DJになる!」とはさすがに言い出しづらく、まずは社会人というものを経験してみようと考えました。

学生時代から音楽やファッションが好きでした。だから、スーツを着る仕事よりも向いていると思ったので、最初に就職したのはアパレル業界です。

-そこで学んだことはありますか?

4年間で店舗の店長とバイヤーを経験しました。ここで感じたのは、服を売る、提案するということは、誰よりも服のことを知っていないといけないということでした。スタッフが説明できないものを消費者は買わないのです。10万円のスーツを自分で購入したり着たりしない人に、10万円のスーツは売れません。

また、店長になって、新入社員を指導する立場になって感じたことがあります。新入社員は「店頭販売はやりたくない」「バイヤーになりたい」「プレスになりたい」と思う人が多かったのです。そこでいつも伝えていたのは「店頭販売というのは、目の前のお客さんのニーズに合わせた商品を店内から探し出すバイヤーであり、商品の魅力を伝えるプレスでもある」ということ。

目の前の一人に対してこのことができなければ、何千万という予算での仕入れや、あらゆる人が読む雑誌の仕事はできません。まずは置かれたポジションで努力して、結果を出すこと。そうすれば、その人のことを他部署や他会社は放っておかないはずです。

-なるほど。その後、河合さん自身もスカウトされて大手総合商社のブランドPR部門や営業に転職したそうですね。

興味を持っていたアウトドア業界の仕事だったので、とても有意義な時間でした。大手広告代理店と仕事をすることで、一流の企画立案や仕事のスピード感を目の当たりにしました。

こうしてサラリーマンを合計8年経験したのですが、やはり大学時代に湧き上がっていたDJへの道が諦めきれませんでした。また、小売と卸売を経験して「モノを売るより、コトを売るビジネス」が魅力的に感じました。そこで、2015年に脱サラしてフリーランスのDJになったのです。

 

やりたいコトより、やりたくないコトを見つけるのも手段

河合桂馬さん

-異色の経歴ですが、学生時代のアルバイト経験はいかがでしたか?

10代の頃は、地元の寿司屋やカラオケボックスでバイトをしました。その後、DJを始めるきっかけになったジーンズショップ。イベントスタッフの単発やインセンティブ制度の新聞勧誘、レストランのホールなど、たくさんのアルバイトを経験しました。

アルバイトをして良かったのは、社会の仕組みが分かるということ。時給制、インセンティブ制、日雇い。様々な雇用形態があって、色んなお金の稼ぎ方があります。

-河合さんのバックボーンでもある“自由”とアルバイトは通じるものがありますね。

そうですね。自由というのはアルバイトの特権だと思います。正社員が自分の気の向いた時だけ出社するというのは難しいと思いますが、アルバイトは違います。自分の時間と仕事の時間のバランスを考えてシフトを入れたり、予定が空いたから日雇いのバイトをやったりと、時間をうまく使うことができます。学生時代に将来やりたいコトを見つけられないと良く聞きますが、僕はやりたくないコトを見つけて潰していくという方法もあると思っています。そういう意味では、興味があったらまずバイトしてみる。合わなかったらその仕事は選ばない。こうやって、理想の仕事に近づいていけば良いのではないでしょうか。

 

人が100%踊り出す音楽は存在しない。だから面白い

河合桂馬さん

-では最後に今後の展望をお聞かせください。

韓国のフェスに参加したことから、もっと海外でDJをしていきたいと思っています。また、国内なら野外フェスの最高峰、フジロックに出演することが目標です。

そのためには目の前のことを一生懸命やっていくこと。未来にばかり目が向いても、今を大事にできなければ1歩が積み上がっていきません。上ばかり見て足元に注意を払わなければ、踏み外してしまうこともあります。1歩ずつ確実に山を登っていれば、いずれ頂上に着きますから。

■プロフィール
河合桂馬(かわい けいま)

法政大学経営学部卒業後、セレクトショップ「FREAK’S STORE」を手がけるデイトナインターナショナルに入社、その後株式会社丸紅フットウェアに転職し、2015年4月にDJとして独立。現在は「GREENROOM FESTIVAL」「GREENROOM CAMP」「GOOUT CAMP」などに出演し、「Let’s Dance in Nature !!!」をテーマに幅広く活躍中。
◆河合桂馬オフィシャルサイト:http://keimakawai.com/biography/

(取材・執筆:佐藤翔一)

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