正社員としての働き方のほかに、契約社員や派遣社員、パート、アルバイトなどさまざまな働き方があります。中でも「1週間の所定労働時間が、勤務先の正社員の所定労働時間よりも短い労働者」を「パートタイム労働者(短時間労働者)」といい、一般的には、パートとアルバイトはこれに定義されます。ただ、実際には、正社員と同じ時間働くパートやアルバイトも存在します。では、パートとアルバイトでは法的な定義や働き方、待遇などに違いはあるのでしょうか。そこで、今回はパートとアルバイトの特徴や違いについて詳しく説明します。
【目次】
アルバイトとは?
一般的には、アルバイトは主に高校生や大学生などの学生や若いフリーターを対象とした、曜日や時間帯を自分で選んで働ける仕事で募集されるときに使われている言い方です。
アルバイトという名称はもともと「勤労」を意味するドイツ語の「Arbeit」が語源になっています。ただ、ドイツ語のArbeitには特に日本語でイメージされるような短時間・短期間の仕事という意味合いはありません。外来語として日本に入ってきて以降、明治時代の学生たちが学業のかたわら生活費などを稼ぐために働くとき、アルバイトという言葉を使っていました。
その後、アルバイトという言葉はドイツ語本来が持つ働くことそのものを指す勤労という意味が薄れ、主に学生が短時間労働をする際の働き方を意味するようになったと考えられています。また、学生のほかに本業を持っている人が本業のかたわらに収入を得るために行う仕事に対してもアルバイトという名称が使われることがあります。
パートの特徴って?
フルタイムに対するパートタイムを略したもので、正社員のようにフルタイムで働くのが難しい育児期女性などに広まった働き方のため、パートと言えば主婦がするものというイメージが強い傾向にあります。
結婚や出産で一度仕事を退職した主婦が、子どもに手がかからなくなったことをきっかけにパート勤務を始めるというケースも多く、子どもが保育園や幼稚園・小学校などに行っている間だけ働くということもあるでしょう。また、中には社会とのかかわりを持つためや自分も何か社会に役立つことをしたいと考えてパート勤務を始める主婦もいるかもしれません。
パートで働く人の場合は家事や育児の合間をぬって仕事をするというケースが多く、各自の家庭生活に支障の出ない時間帯や曜日を選んで勤務しています。そのため、正社員に比べて労働時間が短いというのが特徴的です。
また、学生がアルバイトをする場合は卒業して本格的に社会に出るまでの間だけの仕事という場合もありますが、主婦がパートを探す場合は生活圏内で長く続けられる職場を選ぶことが多い傾向があるため、一般的に契約期間は長期を希望する場合が多いです。長く勤めてベテランになったパート勤務の人は若手の正社員よりも仕事を理解しているケースもあり、スタッフから信頼を集めているという職場もあるようで、正社員と同じ時間働くようなパートも存在します。
アルバイトとパートの違いとは?
アルバイトとパートはどちらも労働基準法の上では区別がなく、正社員や契約社員などの雇用形態と同じ「労働者」として扱われます。ただ、パートやアルバイトの場合は一般的には、勤務時間が短いことから短時間労働者と呼ばれることがありますが、特にパートとアルバイトの違いはありません。
ほかにはパートタイム労働法(*)という法律があり、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」はパートタイム労働者(短時間労働者)と呼ばれています。ただ、この法律上も特にパートとアルバイトが区別されているわけではなく、条件さえ当てはまればどちらもパートタイム労働者として扱われます。
それならなぜ、「パート」「アルバイト」と呼び名が違うのかというと、企業が便宜上の理由から呼び名を使い分けていることがあるからなのです。短期で働くのか長期で働くのか、主に学生をターゲットとしているのか主婦向けの仕事なのかなど、どんな労働者を望むかによってイメージに合った名称を企業が使っているにすぎません。
*正式名称は、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」
社会保険や有給休暇は正社員と違う?
パートとアルバイトには正社員と同じような社会保険制度や福利厚生はないと考えている人もいるかもしれません。しかし、パートタイム労働法でパートタイム労働者として扱われていることはあるものの、労働基準法、健康保険法や厚生年金保険法などでは法律上の違いはありません。そのため、一定の条件を満たしていればパートでもアルバイトでも変わらず正社員と同じように厚生年金保険・健康保険への加入、付与される日数は異なる場合もありますが、有給休暇の取得などが可能です。
また、パートタイム労働法では正社員と職務内容、人材活用の仕組みや運用が同じという2つの条件を満たす短時間労働者には差別的取扱いが禁止されています。つまり、パートタイム勤務であることを理由に賃金の決定や教育訓練、福利厚生施設の利用などを制限してはいけないということです。
パートとアルバイトは基本的には変わらない
ここまで説明したようにパートで働くのもアルバイトで働くのも法律上は違いがありません。企業がどんな労働者を望んでいるかなど、便宜上の理由から募集の名称に違いが出てくることはあります。しかし、パートもアルバイトも待遇面や仕事をするうえではっきりした区別があるわけではなく、基本的には変わらないものだと考えていいでしょう。求人に記載されている名称がどちらかということではなく、どんな職務内容なのかということはもちろん、勤務時間、長期なのか短期なのかなど雇用条件をしっかり把握して自分の望む条件に合う仕事を探すことが大切です。
監修:トミヅカ社会保険労務士事務所 冨塚 祥子